日本語教育通信 本ばこ 『日本語教師のための 実践・漢字指導』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『日本語教師のための 実践・漢字指導』

編者:濱川祐紀代
出版社:くろしお出版

日本語教師のための 実践・漢字指導

URLhttp://www.9640.jp/
発行年月:2010年10月
ISBN:978-4-87424-496-8
判型・頁数:A5判、249ページ

 漢字は日本語を学ぶ上で、重要な鍵の1つであることは、教師・学習者共通の見解ではないでしょうか。「日本語を学ぶとき何が一番難しいですか」と質問すると、「漢字が一番難しい」と答える学習者も少なくありません。同時に、「漢字がとても面白い」、「漢字がもっと読めたり、書けたり、使えるようになりたい」と漢字への興味関心が高い学習者も多くいます。

 しかしながら、時間が限られている実践の現場では、漢字学習=暗記と位置づけられ学習者任せにしてしまうケースもあるかもしれません。

 学習者からは、「どうやって漢字を覚えたらいいのかよくわからない」、教師からは「楽しく漢字を学ばせたり、教えたりする方法はないだろうか」という声をよく耳にします。

 本書は、漢字への理解や記憶を助けるためにはどうしたらいいんだろうか、学習意欲を高めるようなクラス活動はないだろうか、など、漢字の実践的な教え方や漢字・語彙習得についてもっと知識を深めたいと思っている教師に役立つ1冊です。

 さまざまなニーズに合わせた漢字の指導例を数多く紹介しており、日本語教育における漢字指導にすぐにでも役立つアイデアがたくさん詰まっています。

興味のあることから読んでみよう

 構成は5つからなっており、読者自身が興味を持っているところから読むことができます。

 第1部の実践報告では、多様性に富んだ教科書、学習者を対象としたさまざまな現場の実践的な漢字指導が12例紹介されています。各実践報告の最初に、実践校、クラス目的、学習者数、レベル、国籍、使用教材などが表として提示してあるので、読み手が知りたい教育実践例から選んで読み進めたり、具体的な指導方法を思い浮かべながら読み進めることができます。第2部では、学習者の特性による学習スタイルの違いや、テスト作りなど理論的な視点から5つのコラムが紹介されています。漢字を指導する上で知っておきたい知識がわかりやすくまとめてあります。第3部は、教師が理解しているようで見落としがちな、学習者自身の漢字学習に対する気持ちが書かれています。6ヵ国の学習者の率直な声を聞き、教室活動を振り返ってみると、教師が気づいていなかったこともたくさん出てくるかもしれません。第4部では、8つの教室活動が紹介されています。図を使って活動方法がわかりやすく説明されており、教材準備のちょっとしたコツなども書かれています。巻末は漢字教材、字典、Web教材、先行研究一覧などが挙げられており、読者が自分に必要な情報を得ることができます。

実践につなげよう

 日本語を教えるとき、学習内容にまず興味を持たせるということが、学習を継続させたり、理解を促すことにつながります。漢字学習を学習者任せにせず、この本で紹介されている実践例や教室活動例などを参考にしながら、それぞれの現場にあった教室活動のアイデアを考えてみましょう。

P.224(稲葉和栄/日本語国際センター客員講師)の図P.224 P.225(稲葉和栄/日本語国際センター客員講師)の図P.225

(稲葉和栄/日本語国際センター客員講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html

12月のテーマ展示「日本語と外国語との対照研究」
http://jli-opac.jpf.go.jp/display2/201012.html

図書館蔵書検索
http://jli-opac.jpf.go.jp/mylimedio/search/search-input.do?lang=ja

日本語教育ナビゲーション
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/navigation.html

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