日本語教育通信 本ばこ 『ロールプレイ玉手箱』
本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。
『ロールプレイ玉手箱』
著者:嶋田和子・西部由佳・酒井祥子
出版社:ひつじ書房
URL:http://www.hituzi.co.jp/
発行年月:2010年10月
ISBN:978-4-89476-497-2
判型・頁数:B5判、194ページ
ロールプレイは、コミュニケーション能力の養成をめざす日本語教育の中では、もう珍しいものではなくなりました。
しかし、「文型や表現の練習にはなっているけど、本当に会話力がついているのかな?」と思っている教師も多いようです。
本書は、こうした疑問を感じた教師たちによって作られたロールカードと授業のヒントを集めた教師用参考書です。
学習者が困っている場面のアンケートから
筆者たちは、日本で学ぶ学習者にアンケートを行って、ロールプレイの機能や場面を選びましたが、次のように海外でも使えるものがたくさんあります。
- 同じ国の友だちCさんとアルバイトをしています。Cさんは、日本に来たばかりなので、あなたは国の言葉で説明してあげました。でもアルバイト仲間のBさんに「おしゃべりしちゃだめだよ」と注意されました。そうでないことを話してください。(第9課「苦情に対処する/誤解を解く」RP4 、P.157)
将来、日本語を使って仕事をしたい学習者には、聞き手(日本人)の知識や考え方に配慮しながら、自国の状況や自分の考え方を伝える力を身につける必要があります。アルバイトを日系企業での仕事などに変えると、現実味が感じられる練習になります。
どちらの会話が、なぜいいか話し合う
付属の音声CDには、一部のロールプレイ例が収録されていますが、いくつかは2種類の会話があり、学習者が比べて、なぜいいか、どこが問題かを考えたり話し合ったりするようになっています。
ロールプレイのやさしいものは初級終了程度ですが、中級や上級の学習者が自分の知識や日本語経験をふり返りながら会話を学ぶクラスでの使用が特に効果があるでしょう。
本書の構成
構成は8課から成り、「誘う」、「頼む」、「許可を求める」、「謝る」、「断る」、「アドバイスをする」、「困っていることを伝える」、「苦情に対処する/誤解を解く」という機能が取り上げられています。それぞれの課は、場面が3段階に分けられていて、「★身近で、簡単な場面」、「★★難しい状況の場面(誘いにくい、頼みにくいなど)」、「★★★説明が必要な場面」の順に難易度が高くなっています(前に紹介した例は、★★★レベルです)。
筆者たちが授業の中で気がついたことをコラムにまとめた「現場からの声」も、学習者にとってどんなことが難しいか、学習者同士が話し合ってどんなことに気づいたかが書かれていて、参考になります。
(八田直美/日本語国際センター専任講師)
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