日本語教育通信 本ばこ 『はじめて学ぶ日本語学 ことばの奥深さを知る15章』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『はじめて学ぶ日本語学 ことばの奥深さを知る15章』

編著者:益岡隆志
出版社:ミネルヴァ書房

はじめて学ぶ日本語学 ことばの奥深さを知る15章

URLhttp://www.minervashobo.co.jp/
書籍情報:http://www.minervashobo.co.jp/book/b93720.html
発行年月:2011年10月
ISBN:978-4-623-06121-1
判型・頁数:A5判 264ページ

 日本語教師にとって日本語学は避けて通ることのできない分野ですが、それ自体歴史も長く研究対象や内容も多岐にわたる分野です。これから日本語教師になろうとしている人の中にはなんとなく荷が重いと思っている人が多いのではないでしょうか。また、現役の日本語の先生の中でも日本語学の「今」を知るのに適当な本を求めている先生が数多くいるのではないでしょうか。

日本語学の入門書

 この本はタイトルからも分かるように日本語学の入門書です。構成は以下のとおりです。

第Ⅰ部 日本語話者に身近な分野
第1章 日本語史
第2章 方言
第3章 敬語
第Ⅱ部 日本語の仕組み
第4章 音声
第5章 語彙
第6章 文法
第7章 談話
第Ⅲ部 研究分野の広がり
第8章 社会言語学
第9章 日本語教育
第10章 音声コミュニケーション
第11章 コーパス日本語学
第Ⅳ部 外国語との対照研究
第12章 英語との対照
第13章 中国語との対照
第14章 韓国語との対照

 「はじめに」によれば編者は執筆者に「親しく語りかけるような文体」で書くこと、「できるだけ具体的な内容」にすること、「その領域の魅力を伝える‘とっておきの’テーマ」で書くことを依頼したそうで、楽しく読み進めることができます。また、各章の冒頭にはキーワードも含む「この章で学ぶこと」がありますし、各章の終わりには内容確認のための「練習問題」もあり、ポイントが押さえやすくなっています。さらに、簡単な解題も含む「読書案内」や「参考文献」も載っています。ですから、この本を読んで「ことばの奥深さ」を知った方は、日本語学のより奥深い世界へ進むことができるでしょう。

最新の情報も満載

 この本は日本語学の入門者だけではなく、現役の日本語教師の役にも立ちます。執筆者はそれぞれの「領域を極めた」専門家で、各分野の最新の研究にも触れられています。「読書案内」や「参考文献」には、近年発表されたものも数多く掲載されています。一昔前の話になりますが、玉村文郎編『日本語学を学ぶ人のために』(1992、世界思想社)という本が出版されました。その本を読んだことのある先生も多いかと思いますが、筆者の知る限り、この本はその後の日本語学の研究分野や成果を鳥瞰するような一冊、と言ってもいいでしょう。さらに、この本の巻末には執筆者の顔写真/似顔絵や読者に向けたメッセージなども載っています。論文や著作を読んだことはあるものの遠くの存在だったその分野の専門家が、ぐっと身近に迫ってくることでしょう。

 最後になりますが、この本は2年前に出版された『はじめて学ぶ言語学-ことばの世界をさぐる17章-』の姉妹本で、編集方針や構成などがとてもよく似ています。言語学の入門・再入門を望む方には、こちらもお勧めします。

P.170の画像
P.170

(白井 桂/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html

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