日本語教育通信 本ばこ 『マンガで学ぶ日本語上級表現使い分け100』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『マンガで学ぶ日本語上級表現使い分け100』

著者:増田 アヤコ
マンガ:柳原 満月
出版社:アルク

マンガで学ぶ日本語上級表現使い分け100

URLhttp://www.alc.co.jp/
書籍情報:http://shop.alc.co.jp/spg/v/-/-/-/7011030
発行日:2011年11月
ISBN:978-4757420465
判型・頁数:B5判 216ページ + 別冊(21ページ)

 「住民の意見にかかわらず」と「住民の意見にもかかわらず」、あるいは「悪かったら謝るものだ」と「悪かったら謝ることだ」のような似た表現は、ことばによる説明や例文だけでは、その違いがわかりにくいことが多いと思います。
 本書は、4コママンガの中で似たような表現を使うことによって、意味や使い方の微妙な違いを提示しようと試みています。

4コママンガの利点

 マンガを利用することによって、その表現が使われる場面や状況が自然に示されますし、4コママンガは最小単位の談話を提供します。
 さらに、起承転結(ストーリーの流れ)がはっきりしていて、オチ(笑わせるところ)もありますので、例文だけよりおもしろく学べるでしょう。

本書の構成

 「からにはVSからして」、「ほかないVSにほかならない」、「ずにはおかないVSずにはいられない」のような【言い方が似ている表現】(15ペア)と、「に伴ってVSに従って」「つつあるVS一方だ」「ものだVSことだ」「ともなるとVSだけあって」のような【意味が似ている表現】(35ペア)の2部から構成されています。
 各課(4ページ)では、類似表現のペアがそれぞれ1ページずつ4コママンガの中で使われ、意味用法の違いを感覚的にとらえることができます。
 マンガのタイトルとして、類似表現の特徴が一言でまとめられていますし、フォーマルな場面かカジュアルな場面かもわかるようになっています。
 その後に各表現の意味や使い方の説明と例文(3文)が続きます。
 次の2ページは、練習問題になっています。まず、ヒントとなるイラストがついた会話の中に、類似表現のどちらかを入れることによって、使い分けられるかどうかを確認することができます(ページ下に解答があります)。
 最後のページには、「話してみよう」という会話作成の問題が載っています(巻末に解答例があります)。

どのように活用できるか

 本書の活用法としては、まず、日本語能力試験の対策や、常日頃から類似表現の使い分けに興味を持っている学習者が、自習用として使用することが考えられます。練習問題の解答例や文化的背景の説明(マンガの元になる物語の解説)も載っていることから自習は可能でしょう。
 作文や会話の練習は教室で使用するのに向いています。
 最初に、マンガの部分をセリフなしで見せて、場面状況を確認させるなどして使用することもできるでしょう。
 本書の項目には、使い分けに関して、少し強引なところもありますが、類似表現をどう使い分けるかを自分で考えるきっかけになるのではないかと思います。

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(生田 守/日本語国際センター専任講師)

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