日本語教育通信 本ばこ 『ドラマチック 日本語コミュニケーション 「演劇で学ぶ日本語」リソースブック』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『ドラマチック 日本語コミュニケーション 「演劇で学ぶ日本語」リソースブック』

編著者:野呂博子・平田オリザ・川口義一・橋本慎吾
出版社:ココ出版

ドラマチック 日本語コミュニケーション

URLhttp://www.cocopb.com/
書籍情報:
http://www.cocopb.com/cocobooks/booksinfo/エントリー/
2012/4/4_新刊 ドラマチック日本語コミュニケーション.html

発行日:2012年3月
ISBN:978-4-904595-19-0
判型・頁数:A5判 272ページ

 タイトルから「演劇=日本語で芝居をする」と思った方の中には、「私の担当している授業は初級だからとうてい無理」と感じた方もいるかもしれませんが、本書は、3部構成で日本語による口頭コミュニケーション能力を伸ばすための、演劇的アプローチの有効性を理論的に述べるとともに、初級からでも取り組める具体的な活動案を紹介しています。

第1部「理論編」では

 口頭コミュニケーション能力を伸ばす上での演劇的アプローチについて編者4人が語っています。演劇的なアプローチとは、演劇などで俳優や演出家が行っている稽古の進め方や、稽古などの中に取り入れている様々な活動を語学教育に取り入れようという試みであると書かれています。そして、日常でのコミュニケーションと演劇・ドラマの共通性として、1)具体的な場の共有、2)総合的、3)身体的、4)現在進行形の4点を挙げています。「会話文を実際の会話に近づける」音声教育、文脈の中にある学習項目の意味や機能を学習者が演じることで見つけ出す過程を支援する指導など、演劇的アプローチを具体的にイメージできるように説明しています。

第2部「実践編」で

 紹介されている活動で学習させようとしているのは、日常生活でのコミュニケーションで何か言いたいことがあってそれを相手に伝えられるようにするだけではなく、相手とコミュニケーションをとることそのものが目的になるコミュニケーション(何気ないおしゃべりなど)もできるようになることです。
 自分が発言するタイミングをつかむ練習、学習する文法事項がどのように使われるかを体験できる活動、市販の教科書の会話文を利用したスキット練習などは、今までの話す授業を見直すきっかけになるでしょう。
 ゲームとスキットには、初級から上級までのものがあり、学習者の人数、手順、ヒントが書かれています。

第3部「日本語学習者のためのシナリオ」には

 劇作家、演出家である平田オリザ氏監修で、日本語学習者のために書き下ろされた、シナリオがあります。登場人物は、日本人大学生2人、韓国、フランスからの留学生、日本人教師です。「進路」「お葬式」「クリスマスとお正月」というタイトルの3つのシナリオはどれも、芝居がかっていない日常的なやりとりで成り立っていて、東京で生活している大学生が話している話題、話し方のモデルとしています。
 ウェブサイト「ドラマチック日本語コミュニケーション」http://dramaticnihongo.com/には、「第3部 日本語学習者のためのシナリオ」にあるシナリオとことばや文化的項目についての説明の英訳、また、そのシナリオで実際に演じている映像の一部が提供されています。このサイトの愛称は「ドラジャパ」。この愛称の意味を知りたい方は、サイトをご覧ください。

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(坪山 由美子/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

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