日本語教育通信 本ばこ 『日本語力をつける文章読本 知的探求の新書30冊』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『日本語力をつける文章読本 知的探求の新書30冊』

編著者:二通 信子・門倉 正美・佐藤 広子
出版社:東京大学出版会

日本語力をつける文章読本 知的探求の新書30冊

URL: http://www.utp.or.jp/
書籍情報:  http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-082017-2.html
発行日: 2012年8月
ISBN: 978-4-13-082017-2
判型・頁数:A5判 260ページ

 本書は、日本語力を伸ばしたいと思っている高校生、大学生、留学生が、新書を読むことを通じて、読む楽しさや知的発見の喜びを味わいながら学ぶことをめざしています。そして、この本をきっかけに、さらに新書によって読書の世界を広げる機会が与えられるようになっています。
 新書は、文庫本と並んで、(日本国内では)比較的かんたんに手に入る本です。古典を中心として文学作品を多くあつかう文庫と対照的に、新書は「現代的教養」と「新しい学問への入門」を特徴とします。また、専門書に比べて、分量も少なく、やさしく書かれているので、読みやすいです。そのため、新書をきっかけに関心を広げ、知識を深めていくことも可能なので、教室で取り上げるには最適でしょう。
 この本では、「日本の社会のさまざまな側面」や「学問の世界の新しい課題」に関して岩波新書、光文社新書、ちくま新書、講談社現代新書など12種類の新書が取り上げられています。

5つのテーマにより30冊の新書を紹介

 本書の構成は、「読むことの楽しみ」、「日常生活を振り返る」、「日本社会の問題を探る」、「学問の世界に触れる」、「クリティカルに読む」という5つのテーマのもと、テーマごとに6冊ずつの新書が紹介されています。
 各タイトルは書名、著者紹介、本の紹介に続き、5~6ページの本文(3,000~4,000字)が、注とともに掲載されています。
 その後には、「考えてみよう」というコーナーが続き、各新書の内容理解、語彙や文体、内容をさらに発展させる等の問題が3問出題されており、巻末には解答(一部)が付されています。
 最後の「さらに読んでみよう」のコーナーでは、トピックに関連する新書3冊が紹介されています。
 その他に、「コラム」が5編掲載されていて、「本の楽しみ方」や「新書の特色」、「読解力を伸ばすためのストラテジー」などについて述べられています。

本書の活用法

 「『読み』の場を作る」というのが編著者の意図ですが、この本は、文型や語法の習得に重点をおいた読解を離れ、目的(知的理解、内容重視、味読、精読、エクステンシブ・リーディング(extensive reading))を重視した「読み」、あるいは、「読み」から「話す」「書く」などの「産出」をめざす授業のためのリソースとしても活用できる可能性をもっています。また、教室を離れての自立的なグループ学習で使用することもできるでしょう。

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(生田 守/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

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