日本語教育通信 本ばこ 『WEEKLY J 日本語で話す6週間』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

WEEKLY J 日本語で話す6週間』

監修:加藤早苗
編者:秋山信子・坂本舞
出版社:凡人社

WEEKLY J 日本語で話す6週間

URLhttp://www.bonjinsha.com/
書籍情報:http://www.bonjinsha.com/product/?item_id=5490
発行日:2012年4月
ISBN:9784893588159
判型・頁数:B5判 154ページ

 みなさんは“CEFR1をご存じですか。CEFRとは、“Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment”の略で、日本語では「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」と訳されています。EUに加盟するヨーロッパ各国は、この参照枠に従って外国語教育のシラバス、テスト、教材などを作っています。レベルを表すものさしや言語学習に対する考え方を共有していれば、言語が違っても学習環境が違っても、教師も学習者も同じ情報を共有することができます。この利便性が注目され、今日、CEFRはヨーロッパ以外の国でも広く使われるようになってきました。
 本教材は、CEFRの考え方を基本にして作られた日本語テキストです。CEFRのA2~B1レベルの日本語学習者が、自然な日本語を使ってコミュニケーションができるようになるよう工夫がされています。全部で30ユニットから成り、各ユニットに「子どものときのことについて話す」「相手に苦情、文句を言う」などのトピックがあります。ひとつのユニットの学習時間の目安は120分で、タイトルのとおり、6週間ですべてのトピックの学習が終わります。出版社のウェブサイトには、語彙リストや教師用資料が提供されています。

つまずきから始まる日本語学習

 本教材の大きな特徴は、ユニットの目標を学習者にまず意識させ、その目標を達成するための手段として文型や語彙を学ぶように作られている点です。各ユニットは、次のような流れで進みます。
 【答えてみよう】そのトピックについて、その時点の日本語レベルで言えることを言ってみます。学習者は、言いたいことが思うように言えず、もどかしい気持ちになるはずです。このつまずきを利用して、「できるようになりたい」ことを目標として自覚させます。
 【聞いてみよう】モデル会話を聞き、自分が言いたかったことはどのような文型・語彙を使って表現されているのか聞き取ります。
 【言葉を増やそう】【文型】【会話の達人】【練習しよう】そのトピックについて話すために必要な「語彙」「文型や表現」「会話のテクニック」について学び、練習します。ここでは話す練習のほか、【Training】のページを利用して書く練習も行い、正確さの定着も図ります。
 【使ってみよう】「できるようになりたい」ことが「できるようになった」か、習ったことを使いながら自分自身にひきつけて話してみます。この時点で、学習者は、「【答えてみよう】で言えなかったことが言えるようになった!」と、学習の成果が実感できるはずです。

教室の外で実際に使ってみよう

 話をCEFRに戻します。CEFRでは、人間は「具体的な行動を通して種々の課題と取り組みながら、言語能力を獲得していく」と言っています。本教材を使って教室での学習が終わったら、今度は是非、外で実際に使ってみてください。学んだ成果をより一層感じられると思います。

1国際交流基金が開発したJF日本語教育スタンダードもCEFRを参考にしています。レベルイメージなどはこちらで確認してください。http://jfstandard.jp/

P.98-99の画像
P.98-99

(押尾 和美/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

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