日本語教育通信 本ばこ 『日本語を味わう名詩入門』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『日本語を味わう名詩入門』

編著者:萩原昌好
出版社:あすなろ書房

日本語を味わう名詩入門

URLhttp://www.asunaroshobo.co.jp/home/index.html
書籍情報:http://asunaro.bookmall.co.jp/search/info.php?isbn=
9784751526460

発行日:2011年8月
ISBN:978-4-7515-2646-0
判型・頁数:A5変型判 104ページ

 本シリーズは、各巻に編者が選んだ詩人の「名詩」が収められている、詩集のシリーズです。第1期は全8巻で、宮沢賢治、金子みすゞ、八木重吉、山村暮鳥、立原道造、中原中也、北原白秋、高村光太郎の詩集です。続く第2期は全5巻で、萩原朔太郎/室生犀星、丸山薫/三好達治、サトウハチロー、草野心平、高田敏子、というようになっています。さらに第3期として新川和江の詩集が既に刊行、今後は山之口獏、茨木のり子、工藤直子、谷川俊太郎、まど・みちお、石垣りんの詩集の刊行が予定され、全7巻となるそうです。

音楽や絵画を楽しむように

 「詩は『言葉の音楽』『言葉の絵画』ともいわれます」…こんな編者の言葉で詩集は始まります。これはどの巻にもある「読者のみなさんへ」の冒頭部分ですが、この文を編者は次のように締め括っています。「さあ、みんなで、優れた詩人がつくった『心の音楽』や『心の絵』に会いにいきましょう。そして心ゆくまで楽しみましょう。それでは、楽しい『言葉の旅』でありますように」。
 大分前のことですが、日本語の教科書が以前と比べ妙に散文的になってしまった、という話がありました。この傾向は、グローバリゼーションなどに伴い、言語が道具として扱われることが多くなるにつれ、一層強まっているように思われます。言語のもう一つの側面、つまり言語の芸術性、とりわけ韻文における芸術性にも興味や関心を持つ日本語の先生や学習者の皆さんにとっては、まさにうってつけのシリーズです。

詩を「味わう」ためのいくつかの工夫

 このシリーズは、「美しい言葉による書物からの語りかけを、心のどこかで気づかないまま求めている」であろう、子ども達のために編まれています(巻末「父母と教師のみなさんへ」)。分かりにくい語や表現には簡潔な注がありますし、一つ一つの詩の後に解説文があります。それも、説明的で押し付けがましいものではなく「感動の主体が明確になることを主眼」としたものです。また、巻末には「詩人のプロフィール」と「詩の理解を深めるために」という編者の著した文章もあります。さらに、巻ごとに異なった画家やイラストレーターによる挿画が随所にあります。ですから、日本語の詩を読んだことのないノンネイティブの方にも十分「味わう」ことができるでしょう。

朗読の勧め

 では、このシリーズの「名詩」はどのような基準で選ばれたものでしょうか。編者によれば、(1)その詩人にふさわしい個性的な作品、(2)子どもたちにとって適当な長さの作品、(3)朗読・暗唱に活用できる作品だということです。実際に詩を読んでみるとまさにそのような点から選ばれています。特に編者が繰り返し勧めているのが、声に出して読むことです。この詩集の中には、朗読に適した詩がたくさん収められています。この本を手にした方は、是非是非、歯と唇と舌とで詩を本当に「味わって」みてください。

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(白井 桂/日本語国際センター専任講師)

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