日本語教育通信 本ばこ 『中級からはじめるニュースの日本語聴解40』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

『中級からはじめるニュースの日本語 聴解40』

著者:瀬川由美、紙谷幸子、北村貞幸
出版社:スリーエーネットワーク(http://www.3anet.co.jp/

中級からはじめるニュースの日本語 聴解40

書籍情報:http://www.3anet.co.jp/ja/4298/
発行日:2013年7月
ISBN:978-4-88319-665-4
判型・頁数:B5判 96ページ、別冊38ページ、CD1枚付

 インターネットが普及した現在、ウェブ上でもたくさんのニュース動画が配信されています。このようなウェブニュースは、国内外の日本語学習者にとって重要な日本語学習リソースです。しかし、「日本語でニュースを聞くのは自分のレベルでは難しい。」そんなふうに思っている人も多いのではないでしょうか。本書は、そのような学習者にとって生のニュースへの橋渡しをしてくれる実践的な聴解教材です。

ニュースの基本的な構成に慣れる

 この教材のコンセプトは、ニュースに特徴的な基本構成を知り、それに慣れることで、様々な話題のニュースが理解できる実践力を育てていくことです。本書のいうニュースに特徴的な構成とは、以下の三つです。
 ① はじめの文
 ② 詳しい説明
 ③ 補足
 「はじめの文」には、「何がどうした」というそのニュースで伝えるべき中心的な情報があります。「詳しい説明」では、そのニュースの背景や事件の原因などが説明されます。ここはニュースをさらに深く理解するために必要な部分です。「補足」は、関係者や放送局のコメント、追加情報の部分で、ここを内容の中心と間違えないようにすることも大切だと説明されています。

中級レベルの学習者に合わせた素材

 本書で扱われているニュースは、これらの構成に慣れることができるように、実際のニュースを編集したり、著者によって創作されたりしたものです。また、音声は中級の学習者にとって聞きやすいはっきりとした話し方とスピードが特徴です。経済、政治、社会に関するそれぞれ独立したテーマの合計40ニュースが、簡単なものから順番に並べられているため、1課ずつ順番に進めていくことも、興味のあるニュースから始めることもできます。

授業にも自律学習にも

 本書は、授業、自律学習のいずれにも活用できる教材です。
 授業で扱う場合、1課を45分で行います。語彙の確認と全体の理解、ポイントの確認、詳しい理解へと進んだ後、スクリプトを見て内容を確認したり、シャドーイングをして発音の練習をしたりします。また、発展練習としてニュースに対する意見を述べたり、自国と比較する活動にも広げられます。
 本書は、自律学習にも使いやすい構成になっています。1ページ目に内容理解のためのタスク、2ページ目にニュースのスクリプトとタスクの解答が示されているため、1ページ目で内容の理解をすすめ、次のページでその確認を行うことができます。

 日本語でニュースを聞くのは敷居が高い、そう思っている方は一度本書を手にとってみてはいかがでしょうか。本書での学習を進めれば、着実に生のニュースに近づいていく実感が得られることでしょう。
 なお、中級後半~上級レベルの学習者には姉妹編の『ニュースの日本語聴解50』が刊行されています。

P.75の画像 P.76の画像P.75-76

(菊岡由夏/日本語国際センター専任講師)

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