日本語教育通信 本ばこ 論文やレポートに合った表現を使えるようになるための教材 『アカデミック・ライティングのためのパラフレーズ演習』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

論文やレポートに合った表現を使えるようになるための教材
『アカデミック・ライティングのためのパラフレーズ演習』

著者:鎌田美千子、仁科浩美
出版社:スリーエーネットワーク(http://www.3anet.co.jp/

アカデミック・ライティングのためのパラフレーズ演習

書籍情報:http://www.3anet.co.jp/ja/4754/
発行日:2014年3月
ISBN:978-4-88319-681-4
判型・頁数:B5判 74ページ、別冊解答 15ページ

パラフレーズとは

 本書では「パラフレーズ」を「目的や伝達手段などに応じて他の表現に言い換える(書き換える)」という意味で使っています。そして、レポート・論文・発表用スライド・レジュメなどのアカデミック・ライティングで、それぞれに必要なパラフレーズの力を養うことを目的に、さまざまな練習問題をとりあげています。

本書の内容と構成

 アカデミック・ライティングには次のような特徴があります。

  • 話し言葉の表現を使わない
  • 箇条書きや簡潔な文が必要
  • 文献などの引用表現にルールがある

 本書では、こうした特徴に合わせて適切にパラフレーズができるようになることで、アカデミック・ライティング能力の向上を目指しています。第Ⅰ部では単語の言い換えを扱っています。例えば、和語を対応する漢語に言い換えたり、動詞を名詞化したりするパラフレーズ練習を行います。第Ⅱ部では長さのある表現を簡潔にまとめる練習を行います。どちらも次の順序で練習を行っていきます。まず単文の中の下線部を直す練習、次に例文の中の不適切な箇所を見つけて直す練習、最後に文章や図表について、指示に合わせてパラフレーズする練習をします。最後の第Ⅲ部では、具体的な場面を想定した次の①~③の課題に取り組みます。

  1. レポートに文献を引用する。
  2. 研究テーマについて発表するためのスライドを作る。
  3. インタビューの内容(質問と回答)をレポートに書く。

本書の使い方

 これからレポートや論文を執筆しようとする学習者を対象にした授業で使ったり、学習者自身が自習用に使ったりして、目的・場面に応じた、単語、表現、述べ方などのパラフレーズ練習ができます。
 また、本書で取り上げられているのは実際のアカデミック・ライティングの場面で直面しやすい問題の例なので、既に自分で論文を書いたり、発表用のスライドやレジュメを作ったりしている学習者が、自分の文章の改善すべき点を整理するために使うこともできるでしょう。
 なお、本書では、長い文や具体的な例を扱った文を要約したり、簡潔に表現したりする練習が中心になっていますが、学習者によっては逆に、単語や短い表現で済ませた説明を、具体的にかみくだいて書く練習が必要なことがあるかもしれません。このように、アカデミック・ライティングに関する課題は、学習者によっても、また専門分野によっても違います。学習者自身が克服すべき課題を把握し、より高いアカデミック・ライティングの力を身につけていくために、本書は良いヒントをくれるはずです。

P.50の画像 P.51の画像P.50-51

P.52の画像 P.53の画像P.52-53

(長坂 水晶/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html

図書館蔵書検索
http://jli-opac.jpf.go.jp/mylimedio/search/search-input.do?lang=ja

日本語教育ナビゲーション
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/navigation.html

What We Do事業内容を知る