本ばこ 2014年10月

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

ビジネス場面での「書く能力」を養成する
『タスクで学ぶ日本語ビジネスメール・ビジネス文書
 -適切にメッセージを伝える力の養成をめざして-

『タスクで学ぶ日本語ビジネスメール・ビジネス文書』

著者:村野節子、向山陽子、山辺真理子
出版社:スリーエーネットワーク(http://www.3anet.co.jp/

書籍情報: http://www.3anet.co.jp/ja/5060/
発行日: 2014年10月
ISBN: 978-4-88319-699-9
判型・頁数: B5判 90ページ、別冊41ページ

 日本で就職する留学生や海外の日系企業に就職する日本語学習者は年々増加しています。日本語でのコミュニケーションがある程度できる学習者でも、これまで学習した知識やスキルが実際のビジネス場面で通用するかどうか不安に思う人は少なくないでしょう。
 例えばビジネス場面でのメールは取引先との関係や人間関係、企業文化など考慮すべきことが多く、伝える内容をその状況から判断し、的確に書く必要があります。本書は、実際の場面を通して「実践的な」練習をしながら、メール・文書の作成能力の養成を目指す上級学習者向け教材です。

本書の内容と特徴

 本書は、登場人物や会社、部署、取引先などの設定が現実に近く、全体がビジネスの現場で起こりそうなストーリー仕立てになっています。
 具体的には、「受注する」「クレームを受ける」「新規顧客を開拓する」などのUNITごとに、そこで必要となる社内外のメールや文書を、人間関係や状況に応じて作成するタスクに取り組むという内容になっています。日々の業務においてよく使う「メール」は社外、社内共にバランスよく取り上げられ、「文書」は自分で内容や表現を考えて書く必要のある社内用の営業日報、議事録、稟議書、始末書などが学べるようになっています。

本書の使い方

 例えばUNIT3(7課&8課)「クレームを受ける」を見てみましょう。このUNITは、最近社内の確認不足による連絡ミスが原因で顧客からのクレームが続いているという「ストーリー」から始まります。7課ではまず「役に立つ表現」で「何かの手違いとは存じますが」「~とのこと、誠に申し訳ございません」等の表現を確認し、短い練習問題でウォーミングアップをします。そして、商品未着や数量不足に関する問い合わせメール、それに対するお詫びメールといった、社外メールを書く「タスク」に取り組みます。そして続く8課では、ミス防止対策会議の開催を知らせる社内メール、会議の議事録を作成する、その議事録を送付する社内メールを書くといった「タスク」を行います。
 また、「考えよう」にはより効果的に「タスク」を行うためのポイント(例:相手のミスを婉曲に指摘する表現)が書いてあるので、教師も授業で扱うべき内容の参考にできます
 巻末に「解答例」が付いていますが、授業で使用する際には、タスクを行ったあとに解答例と自分が書いたものを見比べて気付いたことを話し合う活動などを取り入れるとよいでしょう。
 また、インターネット環境がある場合は、実際にメールを教師宛に送ると臨場感が増し、効果的な実践練習となることでしょう。

図版1 p.51p.51 図版2 p.54p.54 図版3 別冊p.20解答例(別冊)p.20

(関崎 友愛/日本語国際センター専任講師)

日本語国際センター図書館

「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。

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