日本語教育通信 本ばこ 作文の授業を実践的に見つめなおすために『日本語教師のための実践・作文指導』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

作文の授業を実践的に見つめなおすために
『日本語教師のための実践・作文指導』

編著者:石黒圭
出版社:くろしお出版(http://www.9640.jp/

『日本語教師のための実践・作文指導』の画像

書籍情報: http://www.9640.jp/xoops/modules/bmc/detail.php?book_id=97138&prev=new
発行日: 2014年10月
ISBN: 9784874246368
判型・頁数: A5判 224ページ

 よい作文の授業をするために大切なこととは、どんなことでしょう?どんなテーマで書かせるのか、何をどこまで直せばよいのか、どのような活動をすれば楽しく書けるのか、書く活動だけをしていればよいのかなど、教師の悩みは尽きません。本書はこのような悩みを抱える作文教育に携わる教師に向けて書かれた実践的な作文指導のための本です。

本書の構成と特徴

 本書は「作文教育の基本」と「作文教育の実践」という2部構成になっています。
 前半の「作文教育の基本」では、作文授業を行う教師の仕事として「授業準備」、「教室活動」、「フィードバック」という3つの仕事が挙げられ、それぞれにおいて学習者がつまずくポイントや教師の悩みがQ&A形式で紹介されています。
 たとえば、第5章「総合活動型」で書くでは、書く活動を学習者個人の孤独な作業としてではなく、教師や学習者同士の絶え間ないやりとりの中で作られていくものとする総合活動型の作文授業の例が提案されています。学習者の書くプロセスを支えるためのポートフォリオや教師が日々の学習活動を振り返り、授業改善につなげていくための授業ダイアリーが紹介され、完成した作文だけではなく、書く前の動機づけや書くプロセスにも注目しながら作文授業を作り上げていくことの大切さが述べられています。
 後半の「作文教育の実践」では、筆者らが実際に行った作文教育の実践例が紹介されています。学習者同士のコミュニケーションを目的とし、学習者同士が協働しながら作文を書いていく授業、書評を書くことを通して本・自分・クラスメートとの対話を目指した授業など、これまでの作文授業の枠を超えた多様な実践例が具体的な授業の進め方とともに示されています。

本書の使い方

 前半部分は、授業をデザインしたり見直したりするための参考として、授業を進める上で困っている部分に注目して読んだり、授業を客観的に振り返ったりするのに役立つでしょう。後半部分は、教案やワークシート、評価表、作文の添削例など、すぐに授業に生かすことができる素材が満載です。自分の授業の進め方と比較したり、アレンジして使ってみるのもよいでしょう。
 新しく作文の授業を担当する教師には、授業作りの指針として、ベテラン教師には、自らの作文指導を振り返り、新たな観点を得るきっかけとして、それぞれの視点で多様に活用できる1冊となることでしょう。

図版1 p.156 図版2 p.157P.156-157 図版3 p.193P.193

(尾関 史/日本語国際センター専任講師)

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