日本語教育通信 本ばこ
PRACTICAL JAPANESE:BASIC EXPRESSIONS FOR LIVING AND TRAVEL
くらしと旅行のための基礎日本語』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

すぐに日本語を使いたい人のための独習用テキスト
PRACTICAL JAPANESE:
BASIC EXPRESSIONS FOR LIVING AND TRAVEL

くらしと旅行のための基礎日本語』

『PRACTICAL JAPANESE BASIC EXPRESSIONS FOR LIVING AND TRAVEL くらしと旅行のための基礎日本語』表紙の画像

著者:小川 清美
出版社:IBCパブリッシング(http://www.ibcpub.co.jp/
発行日:2016年10月3日

ISBN: 978-4-7946-0437-8
判型・頁数: 四六判変型、104ページ

 「せっかくひらがなを覚えても、メニューは漢字やカタカナばかりでわからない。」「時間や道は自分で調べられるから、もっと楽しくて、会話で使えるものが知りたい。」
 本書の著者が日本語を教え始めたばかりのころ、仕事や旅行で日本に行ってきた学習者から聞こえてきたのは、こんな声だったそうです。日本への旅行者がますます増えている今、皆さんのまわりにも「旅行ですぐに使える日本語を学びたい」という人がいるのではないでしょうか。本書は、そんなニーズを持った人が、日本での生活や旅行で簡単な日本語が使えるようになることを目指した、独習用のテキストです。

初級語彙ではなく必要な語彙を

 本書の内容を見てみましょう。各Lessonは、文型、語彙、モデル会話が見開きにまとめられており、英語の解説を読みながら、1時間で学習できるようにデザインされています。

P.32-33の画像
P.32-33

 本書の大きな特徴は、各Lessonで取り上げられている語彙でしょう。例えばLesson4では、レストランなどでメニューを見ながら注文するという場面が設定されていますが、「ねぎ」「鮪」「しょっぱい」など、その場面で使いそうな語彙が、いわゆる初級レベルの語彙に限定することなく選ばれています。
 このように、本書は、実際に日本で出会いそうな場面で、文型とそこで必要な語彙とを組み合わせて学習を進めていきます。

1日1時間、1か月の日本語学習

 本書で取り上げられている文型をまとめました。

Chapter1 名詞・形容詞 Chapter2 動詞
Lesson1 お名前は何ですか? Lesson16 (あなたは)日本語がわかりますか?
Lesson2 (あなたは)アメリカ人ですか? Lesson17 駅にATMがありますか?
Lesson3 (あなたは)どちらからですか? Lesson18 (あなたは)どこに行きますか?
Lesson4 これは何ですか? Lesson19 (トムさんは)いつ大阪に来ましたか?
Lesson5 これはだれですか? Lesson20 今日(あなたは)何をしますか?
Lesson6 (あなたは)なんさいですか? Lesson21 映画に行きませんか?
Lesson7 これはだれのペンですか? Chapter3 いろいろな文型
Lesson8 駅はどこですか? Lesson22 私は本を買いたいです。
Lesson9 このペンはいくらですか? Lesson23 メニューを見せてください。
Lesson10 次のバスは何時ですか? Lesson24 写真をとってもいいですか?
Lesson11 ランチは何時から何時までですか? Lesson25 林さんはすもうを見たことがありますか?
Lesson12 小林さんはおすしが好きですか? Lesson26 楊さんは日本語が話せますか?
Lesson13 北海道は寒いですか? Lesson27 (私は)頭が痛いです。
Lesson14 あなたはかわいいです。
Lesson15 旅行はどうでしたか?

Lessonで取り上げられている文型をまとめたもので、本書の目次とは異なります。

 本書は3つのChapterで構成されており、Chapter1では「AはBです」を基本の文型として名詞と形容詞を学習し、Chapter2では動詞を学習します。そして、Chapter3では「いろいろな文型」によって表現の幅を広げます。
 3つのChapterに全部で27のLessonがあるので、1日1時間、1Lessonずつ進めていくと、日本での生活や旅行で使える簡単な日本語が1か月で学習できることになります。

日本滞在に欠かせない漢字とカタカナ

 本書は、文字の扱いにも、日本に行ってすぐに使える日本語を学びたいという人のニーズが反映されています。
 日本語学習の第一歩はひらがなを覚えることだと考える人も多いかもしれませんが、本書は必ずしもひらがなの学習を求めていません。日本語にはすべてローマ字が併記されていて、会話はそれを見ながら学習すればよいとしています。
 一方、漢字とカタカナの学習については、日本で標識やお店のメニューを読むために必要だと説明しています。空港や駅では「入口・出口」「開・閉」「タクシー」、メニューには「ビール」「カフェラテ」「飲み放題・食べ放題」といったように、実際に日本に行って圧倒的に多く目にするのは、実は漢字とカタカナなのです。そして、Introduction(巻頭)の中に、日本でよく出会う漢字とカタカナのことばがまとめて提示されています。

P.14-15の画像
P.14-15

 日本語のクラスで初めて日本語を学ぶ人を前にしたとき、ともすれば彼らを「初級学習者」としてひとまとまりにして、「初級日本語」を教えようと考えてしまいがちです。しかし、学習者にはそれぞれにニーズがあり、達成したい目標があります。何を、どんな順番で教えるのか。文法も、どんな場面で、何のために、どんな語彙といっしょに教えるのか。学習者のニーズによって、学ぶべき内容も学ぶ方法も変わってくるはずです。本書をめくっていると、そんなことに改めて気づかされるのではないでしょうか。

(伊藤 由希子/日本語国際センター専任講師)

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