日本語教育通信 本ばこ
『ポップカルチャー NEW & OLD
-ポップカルチャーで学ぶ初中級日本語-』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

文化をより深く学ぶための教材
『ポップカルチャー NEW & OLD
-ポップカルチャーで学ぶ初中級日本語-』

『ポップカルチャー NEW & OLD -ポップカルチャーで学ぶ初中級日本語-』表紙の画像

著者:花井善朗
出版社:くろしお出版(http://www.9640.jp/
発行日:2017年4月5日

ISBN:978-4874247259
判型・頁数:B5判 220ページ

 「J-POPが好き」、「日本の漫画やアニメが好き」など、ポップカルチャーをきっかけに日本語学習を始めた人たちは少なくないはずです。今回は、様々なポップカルチャー(大衆文化)をトピックに、知的好奇心を刺激しながら日本語・日本文化を学ぶことができる、初級後半から中級前半の学習者のための教材を紹介します。
 この教材は「読み物」と「アクティビティ」の2つを中心に構成されています。学習者になじみ深い漫画、アニメ、歌などのポップカルチャーを切り口に、興味関心を更に広げることができるような読み物と、トピックごとに異なる多様な活動を通じて日本文化への理解をより深めることができます。

知的好奇心を満たす「読み物」

 それぞれの課には、トピックにまつわる複数のテーマの読み物が用意されています。
 例えば、日本のポピュラー音楽を扱っている第7課「歌‐2」の前半では、「ポピュラー音楽のルーツ」「戦前のポピュラー音楽」「戦後の歌謡曲」のように、ポピュラー音楽の変遷に関する知識を深めることができます。また、課の後半では現代作品の特徴に焦点を当て、「テレビの普及とアイドルブーム」「J-POP」「英語の歌詞」をテーマにした読み物が用意されています。読み物の中には、「恋するフォーチュンクッキー」や「いとしのエリー」など、実際の歌の歌詞も取り入れられています。
 「歌」のほか、「漫画」「浮世絵」「アニメ」「踊りと芸能」といったトピックについて、時代・年代による特徴、歴史的背景やルーツ、海外から受けた影響、作品作りのノウハウを伝えるものなど、様々なテーマからポップカルチャーについて学ぶことができます。たくさんの読み物の中から、学習者の興味関心に合うテーマを選んで授業を行うことも可能です。

  • P92の画像 P92
  • P93の画像 P93

学んだ知識を活かし自分でやってみる!「アクティビティ」

 各課のアクティビティには、読み物で得た知識を基に、自分で考えてみたり、調べてみたり、創作してみたりするための活動が取り上げられています。
 例えば、第7課「歌‐2」では、昭和を代表する歌謡曲「リンゴ追分」を用い、「アクティビティ 1」の「「リンゴ追分」のメロディーで表現してみよう!」という活動を行います。この曲は、故郷を離れた娘が、寂しさと故郷の美しい風景への思いを歌ったものです。まず、歌詞をよく読んで、歌に描かれている情景を想像します。そして、学習者自身がこれまでに美しいと感じた風景や印象に残っているシーンを思いながら、「リンゴ追分」のメロディーに合わせ、その情景を表す歌詞を日本語で考えます。最後に、自作の歌詞を「リンゴ追分」のメロディーに当て、歌ってみます。
 また、「アクティビティ 2」の「好きな歌詞を日本語に訳してみよう!」では、自分の国・母語の好きな歌を選び、その歌の中で特に気に入っている部分を日本語に訳してみるという活動を行います。

  • P97の画像 P97
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 この教材を使った授業展開の例として、読み物は宿題にしておき、読んだ内容について話し合ったり、アクティビティをしたりするなど、学習者同士の活動を中心に授業を進めることもできるでしょう。
 また、この教材には専用のウェブサイト(http://www.learnjpcinjapanese.com/)もあり、読み物のサポートとして、音声付きのテキスト、単語リスト、確認クイズなどの様々な補助教材を利用することができます。

 日本語の授業に文化も取り入れたいという教師は多いと思います。そのような教師にとって、日本語や日本文化についての知識を増やすだけでなく、様々な活動を通じ自文化について考えてみたり、自文化と日本文化を比べてみたり、自分で考えたことを他者に伝えるというこの教材の文化の扱い方は、大きなヒントになるのではないでしょうか。

(信岡麻理/関西国際センター日本語教育専門員)

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