日本語教育通信 本ばこ
『実例でわかる 英語テスト作成ガイド』

本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。

テスト作り、確認してみませんか?
『実例でわかる 英語テスト作成ガイド』

『実例でわかる 英語テスト作成ガイド』表紙の画像

編著:小泉利恵、印南洋、深澤真
出版社:大修館書店(https://www.taishukan.co.jp/
発行日:2017年8月1日

ISBN:978-4-469-24610-0
判型・頁数:B5判 176ページ

 本書は、皆さんが日頃作っているテストを、よりよいものにするためのヒントを得ることができる一冊です。

構成

 本書は、3章で構成されています。第1章[テスト添削編]では、実際に作られたテストの添削前と添削後を見比べ、何をどう改善したらよいかを考えます。第2章[理論編]は、テスト作成から実施、そして実施後の扱いに必要な理論を紹介しています。第3章[演習編]では、第1章での気付きや、第2章で学んだことを踏まえて、テスト設計(テスト細目)や状況に基づき、テストの設問を作る演習をします。

 なお、標題のとおり本書は英語のテストを扱っています。またテストの対象も日本の中学生、高校生です。しかしながら、テストに関する理論や作成のポイントなど、日本語のテストに応用できる点がたくさんあります。

これまでのテストを振り返る

 それでは実際のページをみてみましょう。第1章[テスト添削編]では、技能別にテストが紹介されています。原則一つのテストを見開きで扱い、左ページに添削前、右ページに添削後のテストがコメント付で並んでいます。まず添削前のテストとコメントを読み、何が問題になっていて、どのようにテストを改善するべきか自分でも考え、隣ページの添削後のテストを確認すると理解が深まるでしょう。なお、コメントには第2章の関連ページも示されており、理論を参照しながら考え進めることもできます。

P22-23の画像
p.22-23

 そして、自分がこれまで作ったテストを用意し、掲載されているテストと照らし合わせてみるという使い方もできます。特に指示文や設問、状況設定など、これまで当然だと考え、あまり意識していなかった部分に思わぬ改善点や漏れていた箇所がみつかるかもしれません。

テストに関する知識

 続く第2章では、普段あまり言語テスティング・評価研究に接していない人でも理解できるように、最新のテスト理論を踏まえつつ、わかりやすくQ&A形式で、テストに関する知識を説明しています。「テストはどんな手順で作ったらよいか」「授業で扱ったのと同じテキストを定期テストに出すのはよいか(後略)」「選択肢の数はいくつが適当か」といったテストの基本を確認できます。中でも日本語の現場でも関心の高いであろうスピーキング、ライティングテストの作り方やその評価などは、参考になるでしょう。そしてさらに技能統合型テストの作成、テスト結果の活用・分析といった、もう一歩先についても知ることができます。このように多くの人が持っているであろうテストに対する疑問に答え、学べる章となっています。

テストへの取り組み

 本書でも述べられているとおり、今やテストは点を返すだけのものではなく、指導の効果、また学習の改善に役立つものと考えられています。しかし、その重要性がわかっていても、具体的に考えたりする時間はあまりないのではないでしょうか。確かに、日々の授業準備に加えて、特に本書で紹介されているテスト設計(細目)を綿密に考え、準備することは大変なことです。

 けれども、テスト設計をすることで、テスト前後の学びのつながりを、より深めることができます。例えば、実際の授業は4技能を扱っているにもかかわらず、テストは文法、語彙、聴解のみといった、授業とテストの構成が異なるというようなことが防げます(P4など)。

 また、作成するテストで何を測りたいのかが明確になります。ここでは、テスト設計のうち、採点方法で検討するルーブリック(採点基準)をみてみましょう。

P38の画像
p.38

 本書では、よいルーブリックは、その記述をみればこのテストの一番よいパフォーマンスがわかり、また学習者が自分の点をみて、何を改善したらよいのかがわかることが大切だと述べられています(P37-38など)。テスト設計時に、このような的確な記述をしたルーブリックが作られていれば、複数の教師が採点しても一貫性を保ちやすくなります。また学習者にとっては、これから何を目標にすべきかがわかるフィードバックとなるので、日々の学習の改善につながるでしょう。

 このように、本書は、今まで作ってきたテストを振り返り、さまざまな改善点に気付く仕組みとなっています。皆さんも、本書を使った勉強会を開くなどして、これからのテスト作りについて考えてみませんか。

(夷石 寿賀子/日本語国際センター専任講師)

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