日本語教育通信 授業のヒント マンガでオノマトペ(擬音語・擬態語)を楽しむ

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。

マンガでオノマトペ(擬音語・擬態語)を楽しむ

概要
目的
  • マンガを利用した楽しい活動を通してオノマトペを理解する
学習者のタイプ
  • 中級~
クラスの人数
  • 何人でも

マンガのオノマトペ

 雨が「ザーザー」降る、犬が「ワンワン」ほえるなど、音や声を直接表す言葉を「擬音語(擬声語)」、星が「きらきら」光る、子どもが「にこにこ」笑うなど、ものや人の様子を直接表す言葉を「擬態語」といい、こういった言葉をまとめて「オノマトペ」といいます。
 日本語はオノマトペがたくさんある言語です。話し言葉でも書き言葉でもよく使われます。特にマンガでは、オノマトペがたくさん使われています。マンガのオノマトペは静かな場面では小さく細い字で、大きい音や激しい感情を表すには、大きく太い字で表現されることが多いです。オノマトペによって細かい感情や動きなどが付け加えられ、静止しているはずのマンガが、生き生きと動きのあるものになります。今回はそんなマンガのオノマトペを使った活動を3つ紹介します。

1.好きなオノマトペ

<活動の手順>

  1. (1)マンガを見て気に入ったオノマトペを探す
  2. (2)探したオノマトペをクラスで発表する

 例として韓国の高校生が発表した「好きなオノマトペ」を紹介します。彼女は、うっとりと目をうるませた女の子の絵を見せながら発表しました。

私の好きなオノマトペは「キラキラ」です。目に光があります。これが「キラキラ」です。
多分、この子は好きな男の子を見て、うれしくて、キラキラしています。

 選んだオノマトペが何を表すか、クイズ形式で発表するのもおもしろいと思います。初めて見たオノマトペであっても、マンガを見せれば、前後のストーリーや絵から推測できるはずです。

2.音でわかる?

<準備>
 オノマトペを抜いたマンガのコマ・効果音
  (注:インターネットで「効果音」「効果音、無料」と検索すると、無料で利用できる音素材が入手できます。
   各サイトの利用規約に従って利用してください。)

<活動の手順>

  1. (1)効果音を聞き、それが何の音か考える
  2. (2)オノマトペを隠した絵を見ながら、もう一度音を聞く
  3. (3)どんなオノマトペが入るか考えて発表する

例えば、まず水の音と以下のような画像(左)のコマを準備します。

オノマトペを隠したマンガ オノマトペが付いているマンガ

 女の子が顔を洗っているところです。これはどんなオノマトペで表現されるでしょうか。「ピチャピチャ」「パチャパチャ」「ジャブジャブ」・・・いろいろ考えられそうです。オリジナルのマンガに描かれているのは、「パシャパシャ」です(右)。
 実は、オノマトペには代表的な形はあるものの、必ずこれでなければならない、といった正解はありません。マンガのオノマトペは作者の個性もあり、特にバリエーションが多いようです。しかし、以下のような一般的なルールがあります。

  • 濁音「゛」は大きい音、活発な動作
     パシャパシャ → 手ですくった水の音
     バシャバシャ → 勢いよくしぶきを上げながら水に入った時の音
  • 母音は「a→o→e→u→i」の順に大きい音を表す
     ワハハハ → 口を大きくあけて大声で笑う
     クスクス → 声を殺して笑う
  • 促音「っ」はスピード感
     くるっ → 急に顔や体の向きを変える様子

3.オノマトペだけでわかる?

<準備>
 オノマトペだけのマンガ画像

<活動の手順>

  1. (1)オノマトペだけのマンガを見る(左)
  2. (2)オノマトペを手がかりに、どんなストーリーか(場所、人物、人物の行動など)を考える
  3. (3)元のマンガを見て、オノマトペが何を表しているかを確認する(右)

オノマトペだけのマンガ オノマトペと絵が入っているマンガ

 例え知らないものがあっても、1つか2つのオノマトペが特定できれば、あとは推測できます。このマンガを使って活動した学習者たちは、「キーンコーンカーン」を頼りに、舞台が学校だと特定し、「消しゴムで消している音」、「文字を書いている音」などを連想していました。

マンガ作品の選び方

 マンガを教材とする場合、学習者が好きな作品を利用すれば、教材自体への興味から、高いモチベーションを持って活動できるでしょう。一方で、実際のマンガを使う場合、取り上げたいオノマトペが見つからない、絵がわかりにくいということもあります。そのような場合は、マンガでオノマトペを解説している教材やウェブサイト(本稿の最後で紹介しています)を使うのもよいでしょう。

著作権について

 授業でアニメを見せたり、マンガのコピーを配布したりする場合、著作権への配慮が必要です。営利を目的としない教育機関であれば、授業を直接担当する教師やその授業を受ける学習者自身が授業で使用する目的で著作物を複製することができます(著作権法第三十五条第一項)。ただし、認められているのは授業に必要な最小限の範囲のみコピーすることで、作品の全てをコピーして配布してはいけません。なお、関西国際センターが制作・運営している「アニメ・マンガの日本語(http://anime-manga.jp)」は、各教育現場での利用を歓迎しています。ぜひご利用ください。
 ※本稿の画像はすべて「アニメ・マンガの日本語」にあります。また、紹介した活動で使える教材を「KCクリップ (https://kansai.jpf.go.jp/clip/anime/lesson.html)」で提供しています。

【マンガを利用した教材・ウェブサイト】

G. Kardy (2007) Kana de Manga Special Edition: Japanese Sound FX! Japanime Co. Ltd.
 動物、人間、機械、自然に関する約200のオノマトペをコマ画を使って紹介。
 類似するオノマトペとの違いについての解説もあります。本文は英語です。

「アニメ・マンガの日本語」http://anime-manga.jp
 「Expressions by Scene」では、ジャンル別にオノマトペや一言フレーズをストーリーマンガ形式で紹介。
 「Quiz: Sound FX」ではクイズに挑戦できます。

WEB版エリンが挑戦!にほんごできます。」http://erin.ne.jp/
 「基本スキット」では、映像スキットをマンガで読むことができます。
 マンガ内のオノマトペを映像で紹介する「マンガで覚えるオノマトペ」コーナーもあります。

(川嶋恵子/関西国際センター日本語教育専門員)

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