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「まるごと日本語オンラインコース」
-楽しく自学自習できるeラーニング-

日本語教育ニュース
このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。

国際交流基金関西国際センター

 「まるごと日本語オンラインコース」は、「JFにほんごeラーニング みなと」(以下、「みなと」)で開講されている、総合的な日本語力を身につけるためのコースです。今回は、「まるごと日本語オンラインコース」の特徴や使い方について紹介します。

「まるごと日本語オンラインコース」とは?

まるごと日本語オンラインコースイメージの画像
「まるごと日本語オンラインコース」

 「まるごと日本語オンラインコース」は、国際交流基金がJF日本語教育スタンダードに基づいて開発したコースブック『まるごと 日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)をオンラインコース化したものです。インターネット環境と、パソコンまたはタブレット、スマートフォンなどの機器があれば、いつでも、どこでも日本語を学ぶことができます。

 『まるごと』のeラーニングについては、「まるごと+(まるごとプラス)」をご覧になったことがある人もいるのではないでしょうか。「まるごと+」は、教室で『まるごと』を使って学ぶ人たちの自習をサポートするサイトで、会話、文法、漢字、語彙、生活と文化などのコンテンツがあります。教室で学んだ会話を動画と一緒に練習したり、クイズで文法や漢字の理解を確かめたり、日本の生活や文化について動画を見たりするなど、自分のニーズに合わせて練習を選び、利用できるようになっています。

 一方、今回紹介する「まるごと日本語オンラインコース」は、コースブックをオンラインコース化したもので、練習やクイズだけではなく、導入や解説などがあり、コースの流れに沿って、一人で日本語が学べるようになっています。教室に行かなくても、自学自習で総合的な日本語力を身につけることができるので、近くに日本語を学ぶ教室がない人や、教室に通う時間がないという人に適しています。

「まるごと日本語オンラインコース」の特徴

  • 教室に通わず、オンラインで一通り日本語が学べる
  • 音声を聞いたり、動画を見たり、クイズに挑戦したりしながら、自分で理解が深められる
  • マイページでどこを学んだか把握しながら、自分のペースで進められる

学習コンテンツ

 「まるごと日本語オンラインコース」では、聞く、話す、読む、書くの4技能全てに関わる活動を含むインタラクティブな学習コンテンツで日本語を学びます。学習コンテンツには「かつどう」コンテンツと、「りかい」コンテンツの2種類があります。「かつどう」コンテンツでは、日本語をたくさん聞き、話す練習を通して、コミュニケーションの実践力をつけ、「りかい」コンテンツでは、コミュニケーションに必要な日本語のしくみについて体系的に学ぶことができます。各課は「かつどう」コンテンツ、「りかい」コンテンツの順に学習を進めるようになっていて、2つのコンテンツを通して、総合的に日本語力をつけることができます。

◆「かつどう」コンテンツ

 目標Can-doごとにステップ1~6の順で学習し、日常生活場面でコミュニケーションする力を身につけます。

ステップ1:目標を知る 目標Can-doや場面を確認します
ステップ2:見る・聞く・言ってみる 音声を聞いて、文や表現を言う練習をします
ステップ3:聞く・気づく 会話などを聞いて、内容を理解し、表現に気づきます
ステップ4:使ってみる 動画を見て話す練習をしたり、日本語を書いたりします
ステップ5:Can-doチェック 目標Can-doができたか、自分でチェックします
ステップ6:生活と文化 日本の生活と文化について写真や動画を見て、理解します(偶数課のみ)
  • 「かつどう」ステップ1画面の画像
    ステップ1
  • 「かつどう」ステップ2画面の画像
    ステップ2
  • 「かつどう」ステップ3画面の画像
    ステップ3
  • 「かつどう」ステップ4画面の画像
    ステップ4
  • 「かつどう」ステップ5画面の画像
    ステップ5
  • 「かつどう」ステップ6画面の画像
    ステップ6

◆「りかい」コンテンツ

 課ごとにステップ1~8の順で学習し、日本語のしくみについて学びます。

ステップ1:きほんぶん 学習項目を確認します
ステップ2:もじとことば 文字とことばを練習します
ステップ3:かんじ トピックに関係することばの漢字を学びます
ステップ4:かいわとぶんぽう 会話と文法を結びつけ、文の構造やルールを理解します
ステップ5:どっかい 短い文章を読みます
ステップ6:さくぶん 短い文章を書きます
ステップ7:クイズ まとめのクイズをします(A1-1、A1-2コースのみ)
ステップ8:にほんごチェック 場面にあった日本語の使い方がわかったか、自分でチェックします
  • 「りかい」ステップ2画面の画像
    ステップ2
  • 「りかい」ステップ3画面の画像
    ステップ3
  • 「りかい」ステップ4画面の画像
    ステップ4
  • 「りかい」ステップ5画面の画像
    ステップ5
  • 「りかい」ステップ6画面の画像
    ステップ6
  • 「りかい」ステップ7画面の画像
    ステップ7

学習継続のための工夫

 オンラインでの学習は、いつでも、どこでも学習でき、簡単に始められるという良さがある反面、やめるのも簡単で、継続するのが難しいという性質があります。「まるごと日本語オンラインコース」では、興味を持って始めた日本語学習を、楽しく、そして無理なく続けられるように、いろいろなサポートを用意しました。

◆学習サポートコンテンツ

 自学自習では、わからないことがあっても質問できる先生やクラスメイトはそばにいません。そこで、「まるごと日本語オンラインコース」では、学習内容でわからないことがあった場合に自分で調べたり、説明を参照したりできるようにしました。一人で学んでいても「学習サポートコンテンツ」を活用することで、ことばや表現、文化などに関する知識を得て、自分で理解を深めることができます。

<全体のサポート>

 コースで学ぶ内容の一覧や文法資料、語彙帳や漢字リストなどがあり、いつでも参照できます。また、これらの資料はPDFでダウンロードすることもできます。

<課ごとのサポート>

 その課で学ぶ「ことば」「きほんぶん」「かんじ」の意味や説明がいつでも調べられます。

<各学習内容のサポート>

 学習する内容に応じて、新しいことばや表現、日本の文化情報などの補足説明があります。

  • 全体のサポート画面の画像
    全体のサポート
  • 課ごとのサポート画面の画像
    課ごとのサポート
  • 各学習内容のサポート画面の画像
    各学習内容のサポート

◆マイページ

 一人一人にマイページがあります。マイページには自動的に学習記録が残るので、日々学びの過程を確認しながら、自分のペースで学習を進めることができます。

<学習進捗ページ>

 学習の進み具合が記録された表があるので、どこまで学習したかを確認することができます。また、学習の進み具合にあわせて、メッセージや、文化情報や学習に役立つ表現をまとめた画像のプレゼントが届きます!

<ポートフォリオページ>

 Can-doチェックやにほんごチェックでの自己評価やコメント、書く課題などの学習の成果が確認できます。また、「日本語・日本文化の体験記録」を写真付きで記録することもできます。

  • 学習進捗ページ画面の画像
    学習進捗ページ
  • ポートフォリオページ画面の画像
    ポートフォリオページ

受講方法とコースの種類

「みなと」画面の画像
「みなと」

 「まるごと日本語オンラインコース」は「みなと」で開講されています。コースを受講するためには、「みなと」への登録(無料)が必要です。好きなコースタイプ、レベル、解説言語を選ぶことができます。

◆コースタイプ

 2種類のコースタイプがあります。

自習コースのイラスト
自習コースイメージ図

<自習コース>

 インタラクティブな学習コンテンツで自学自習するコースです。いつでも学習を開始することができます。

教師サポート付きコースのイラスト
教師サポート付きコースイメージ図

<教師サポート付きコース>

 インタラクティブな学習コンテンツでの自学自習に、担当教師によるサポートが加わるコースです。サポートには、課題の添削やトピックごとのライブレッスンなどがあり、コースの仲間や先生と実際に日本語を使ってコミュニケーションをすることができます。

◆レベル、解説言語

 2017年12月現在、自習コースはA1レベルとA2レベルのコースを開講しています。(初級2(A2)レベルのコースは、2018年8月以降に開講の予定です。)

コースブック オンラインコース名 (※自習コース) 解説言語
入門(A1)
入門(A1)コースブック
1~10課 まるごとA1-1(かつどう)自習 英語
スペイン語
インドネシア語
タイ語
※中国語、ベトナム語(2018年1月開講予定)
まるごとA1-1(かつどう・りかい)自習
11~18課 まるごとA1-2(かつどう)自習
まるごとA1-2(かつどう・りかい)自習
初級1(A2)
初級(A2)コースブック
1~10課 まるごとA2-1(かつどう・りかい)自習 英語
※スペイン語(2018年5月開講予定)
11~18課 まるごとA2-2(かつどう・りかい)自習

 教師サポート付きコースは、開講拠点によって募集期間、受講期間、定員などが異なります。詳しい情報は「みなと」でご確認ください。

教育現場での活用例

 「まるごと日本語オンラインコース」を教室での学習と併用する方法もあります。
 例えば、海外では授業の前に学習者に「まるごと日本語オンラインコース」で自習してきてもらい、教室では会話練習や作文へのフィードバックを中心にするなど、反転授業的に活用しているという報告がありました。

 また、国内では、理系の大学院生に教えている方や、地域の日本語教室でボランティアをしている方から、「教室での学習時間は非常に限られているので、このコースを活用することで自習が促せ、教室での活動の幅も広がりそう」という声がありました。

 このような声から、開発者として様々な教育現場での活用の可能性を感じています。より多くの方に「まるごと日本語オンラインコース」を通して、気軽に、そして楽しく日本のことばと文化を学んでもらえるよう願っています。

 お問い合わせは、「みなと Contact usからお願いします。みなさまからのご感想やご意見もお待ちしています。

<関連サイト>

 「まるごと日本語オンラインコース」の概要説明があり、「まるごとA1-1(かつどう・りかい)自習コース」の5課を体験することができます。また、どのレベルのコースを受講すればよいかわからない方のために、「おすすめコース診断テスト」も用意しています。

※「みなと」は、国際交流基金関西国際センターが2016年7月に公開した日本語学習のためのプラットフォームです。「みなと」では、オンラインコースで日本語を学んだり、コミュニティで世界中の仲間と交流したりすることができます。詳しくは、日本語教育通信(2016年7月更新分)をご覧ください。

(武田素子/関西国際センター日本語教育専門員)

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