日本語教育ニュース さようなら!WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」
- 日本語教育ニュース
- このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。
2020年5月
国際交流基金日本語国際センター

1.WEB版エリンは新しいサイトに移行します
「エリンが挑戦!にほんごできます。」は、国際交流基金日本語国際センターがNHKエデュケーショナルと共同で開発した中等教育向けの映像教材です注1。2006年10月からテレビ版の放映が始まり、2007年には3巻のDVD版が出版されました。WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」(以下、WEB版エリン)は、テレビ版とDVD版の内容に加え、オンラインでの学習が可能な練習問題やクイズ、ゲームなど、新しいコンテンツを大幅に追加したインタラクティブなサイトとして、2010年3月に公開されました。世界のどこからでも自由に無料で使え、現在も、日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、韓国語、フランス語、インドネシア語、タイ語の9言語で公開しています。
このように、10年の間、広く世界中のユーザーの皆様に使われてきたWEB版エリンですが、サイトで使用していた Adobe Flash のサポートが2020年末で終了するため、現在のWEB版エリンをこのまま運用し続けることは、残念ながら難しい状況となってしまいました。そこで、WEB版エリンは2020年7月31日をもって公開を終了し、新しいサイト「『エリンが挑戦!にほんごできます。』コンテンツライブラリー」に移行します。新しいサイトはマルチデバイス対応になり、スマホやタブレットでの閲覧が可能になります。また、現在WEB版エリンにあるすべての動画は、新しいサイトでも引き続き見ることができます。
一方、これまでWEB版エリンにあった、スキットの確認問題や練習問題、クイズ、ゲーム、ログイン後の「学習の記録」やアバターなど、Flashを使ったインタラクティブなコンテンツは公開を終了し、新しいサイトからは無くなることになります。この10年間、WEB版エリンを利用してくださった皆様、長年のご愛顧ありがとうございました。そこで今回は、WEB版エリンの10年を振り返るとともに、サイトの公開終了までにぜひ見ていただきたいコンテンツを紹介したいと思います。
- 注1.エリン制作の基本となった考え方については、「『エリンが挑戦! にほんごできます。』 —この教材で伝えたい考え方—」(『日本語教育通信』第59号)【PDF:595KB】をご覧ください。
2.WEB版エリンの10年を振り返る
この10年間で、WEB版エリンは世界の236の国・地域からアクセスがあり、総ページビューは51,453,963PVに達しました。登録ユーザーの数は、99,074人にのぼりました(いずれも2020年2月時点でのデータ)。WEB版エリンはユーザー登録をしなくても主要な機能はほぼ使えるにも関わらず、これだけ多くの皆様にユーザー登録していただきました。
国別ランキング
2020年2月までの10年間で、WEB版エリンへのアクセスが多かった国・地域をランキングにすると、以下のとおりでした。
表1 アクセスの多い国・地域別ランキング20位(2020年2月現在)
1 | アメリカ |
---|---|
2 | 日本 |
3 | 中国 |
4 | 台湾 |
5 | ベトナム |
6 | ブラジル |
7 | 韓国 |
8 | オーストラリア |
9 | インドネシア |
10 | フランス |
11 | スペイン |
---|---|
12 | メキシコ |
13 | ロシア |
14 | イギリス |
15 | ドイツ |
16 | タイ |
17 | コロンビア |
18 | 香港 |
19 | カナダ |
20 | イタリア |
国別のアクセスランキングでは、日本を抑えてアメリカが1位でした。また、国・地域別の日本語学習者数と、WEB版エリンへのアクセスは必ずしも一致せず、北米、中南米、欧州などから積極的にアクセスしていただきました。特に、17位にランクされているコロンビアは、国全体の日本語学習者数に比べてWEB版エリンへのアクセス数が極めて多く、ときには月間アクセス数の1位になったりすることもありました。コロンビアにはWEB版エリンの熱心なユーザーの方が何人かいらっしゃるようで、スタッフの間でもときどき、「なぜコロンビアから?」と話題になりました。
ユーザーランキング
サイトに頻繁にアクセスし、たくさんの内容を勉強したユーザーのランキングは、2020年2月時点で、以下の皆様がトップ10でした。アバターを見ると、ランキング上位の皆様は、「にほんごクエスト」で入手した服やアイテム、髪型をいろいろ使い、個性的で楽しいアバターを作っていることがわかります。
-
1位
生徒さん
(米国) -
2位
riskeさん
(スウェーデン) -
3位
Laliloさん
(フランス)
-
4位
Maygreenさん
(インドネシア) -
5位
NEOさん
(フィンランド) -
6位
Ricoさん
(ブラジル) -
7位
ReneLeBeauさん
(セルビア) -
8位
キムスンウさん
(韓国) -
9位
Capstan50gさん
(米国) -
10位
つばきさん
(ルーマニア)
アクセスの多かったコンテンツ
コンテンツのうち、最もアクセスが多かったのは、「基本スキット」の動画でした。ユーザーはやはり第1課から見はじめるようで、第1課の「基本スキット」がすべてのコンテンツの中で最もアクセスが多く、第2課、第3課と続きます。そのような傾向の中、特に目立ったコンテンツをご紹介します。
文化クイズ>第8課「日本の食べ物クイズ」

文化クイズの中では、第8課「日本の食べ物クイズ」が人気でした。これは、「日本では12月31日に何を食べる習慣がありますか?」「かまぼこは何から作られていますか?」などの質問に4択で答えるクイズです。文化クイズの中で「日本の食べ物クイズ」は、比較的やさしく、また、興味深いテーマだったからでしょうか。文化クイズでは、ほかに第21課の「アニメ&マンガクイズ」や第24課「日本の年中行事クイズ」なども、多くアクセスされました。逆に、アクセスが少なかったのは、第22課「防災クイズ」でした。しかし、今にしてみると、日本での生活に密着した内容重視の日本語教育に役立つコンテンツだと思います。今からでも、ぜひ見てみてください。
ゲーム>第5課「バーチャル書道ゲーム」

マウスを使って筆で文字が書ける「バーチャル書道ゲーム」が、ゲームの中では1番の人気でした。このほか、第8課の「ざるそばゲーム」や第12課「押忍!リズムde応援団ゲーム」などが、比較的多くアクセスされました。特に、ホニゴンが「ずるずるずるっ」と言いながら蕎麦をすする「ざるそばゲーム」はインパクトが強く、根強いファンも大勢いました。また、ほかにも、海外の「日本祭り」で、第1課の「名刺を作ろう!ゲーム」を使って来場者のカタカナの名刺を作ったところ、好評を得たという報告や、第6課の「笹船危機一髪!ゲーム」に子どもがハマってしまった、という声などもありました。
3.最後のチャンス!「にほんごクエスト」をクリアしよう!
最後に、新サイトに移行したら使えなくなってしまうコンテンツのうち、ぜひ皆様に見ていただきたいコンテンツとして、「にほんごクエスト」をご紹介します。
「にほんごクエスト」とは?
WEB版エリンには、ユーザー登録をした人が挑戦できるロールプレイングゲーム「にほんごクエスト」があるのをご存じでしたか?町の中で、いろいろな人に話しかけて会話をするゲームです。サイトで勉強すればするほどCan-do(できること)が開放され、話せることが増えていきます。誰にどのように話しかけるかによって、いろいろな反応があります。「ひみつのじゅもん」をもらえることもあります。「ひみつのじゅもん」をすべて集めて、ホニゴンの家に行けたらクリアです。
しかし、WEB版エリンがオープンしてから10年の間に、ホニゴンの家まで行った人は、これまで全世界でたったの25人!(日本6、ブラジル3、韓国2、ドイツ2、フィンランド2、アメリカ2、中国2、アゼルバイジャン、台湾、スウェーデン、ルーマニア、イギリス、パキスタン各1)。WEB版エリンの登録ユーザー数は99,074人ですから、クリアしたのは約4,000人に1人ということになります。新サイトはFlashが使えませんので、この「にほんごクエスト」も公開終了となります。そこで、最後のチャンスとして、公開終了までに、ぜひこの「にほんごクエスト」をクリアして、感動のエンディングを体験してください!
準備1:Flashを使えるようにする
トップページ
現在、ブラウザの初期設定で、Flashが使えないようになっている場合が多いと思います。サイトの右側中段、「お知らせ」の部分にあるカレンダーのサムネイルをクリックすると、Flashプラグインをダウンロードするようメッセージが出ますので、Flashのバナーをクリックして、「Flashの実行」を「許可」してください。再読み込みをする必要がある場合もあります。またFlashをブロックする設定になっているときは、「プラグインをブロックしました」のようなメッセージが出ますので、その部分をクリックして、Flashの実行を許可してください(たとえばChromeの場合、「管理」の画面が出るので、その中の「サイトでのFlashの実行をブロックする(推奨)」を「最初に確認する」に変えます)注2。
なお、iPadなどのタブレットやスマホの標準ブラウザでは、Flashは使えません。PCを使うか、またはFlash対応のブラウザをインストールしてお使いください。
- 注2.詳細は、お使いのブラウザによって異なります。Adobe Flash Playerなども参考にしてください。
準備2:ログインする
ログイン後トップページ
WEB版エリンはログインしなくても全ての機能が使えるため、ログインしないで使っていた方も多いのではないでしょうか。しかし、「にほんごクエスト」をプレイするためには、ログインが必要です。また、ログインしないままいくらサイトで勉強しても、ゲームの中で使えるCan-doは増えません。ログインはとても大切です。Flashが使えるようになると、画面右上にログインのボックスが出ますので、そこに登録のメールアドレスとパスワードを入れてください。もちろん、今から新規にユーザー登録していただいても大丈夫です。ログインしたら、「にほんごクエスト」のボタンが出ますので、これを押したらスタートです!
キャラクターは23人!
「にほんごクエスト」のキャラクターは、全部で23人。町を歩いていたり、建物の中にいたりします。町は、「マイタウン」、「ファッションタウン(5つの課を勉強すると開放)」、「温泉(15の課を勉強すると開放)」の3つがあり、それぞれ次のキャラクターがいます。
マイタウン
- <マイタウン>
- 歩いている人
- (1)男子高生(けんた)
- (2)おじいちゃん
- (3)奥さん
- (4)サラリーマン
- (5)男の子
- 建物の中にいる人
- (6)レンタルビデオ店(店員)
- (7)ファッション店(店員)
- (8)駅(駅員)
- (9)ハンバーガー店(店員)
- (10)学校(先輩)
- (11)武道場(柔道家)
- (12)交番(警察官)
- (13)ゲームセンター(店員)
- (14)塾(先生)
- (15)遊園地(咲)
ファッションタウン
- <ファッションタウン>
-
- (16)美容室(店員)
- (17)ファッション店(店員)
- (18)クレープ店(店員)
- (19)駅(駅員)
温泉
- <温泉>
-
- (20)女将さん
- (21)卓球おじさん
- (22)宿泊客のおじさん
- (23)仲居さん
*このほかにも、隠れキャラがいるかもしれません
Can-do(できること)を増やそう!
キャラクター、または建物(入口の黒い部分)をクリックすると、会話が始まります。会話の内容は、選んだCan-doによって変わります。選べるCan-doは、サイトで課を勉強すればするほど、どんどん増えていきます。
いちばんはじめは「はじめてのあいさつ」しか選べません。しかし、サイトで、第2課「おねがいする-学校」を勉強したあとは、「にほんごクエスト」でも「おねがいする」が選べるようになります。例えばサラリーマンに「おねがいする」を選んで話すと、「ホニゴンの家を教えてください」という会話が始まります。サラリーマンはそれに答えて、「ひみつのじゅもん」をくれます。

その課を勉強したかどうかは、具体的にはそれぞれの課で次の5つのタスクを実行することで判定されます。
- 1. 基本スキット>動画を見る
- 2. 応用スキット>動画を見る
- 3. 大切な表現>解説&例文
- 4. 見てみよう>文化クイズ
- 5. やってみよう>ゲーム
この5つのタスクを終了すれば、その課のCan-doが開放されます。
攻略法!
上の5つのタスクを終了したかどうかの判定は、動画を最後まで全部見たり、クイズを全て解いたりする必要はありません。1と2は動画のスタートボタンを押す、3は「解説&例文」のページを開く、4はクイズをスタートして間違えるまで解く、5はゲームスタートのボタンを押す、というアクションだけで、タスクを終えたと判定されます。「にほんごクエスト」のクリアが目的の場合、「にほんごクエスト」に行く前に、まずは第1課から第25課までで上の5つのタスクを行い(そのとき、ログインすることを忘れずに!)、25個のCan-doを全て開放してから、そのあと「にほんごクエスト」で、1人のキャラクターに対していっぺんに25種類の会話をして、そのあと次のキャラクターとまた25種類の会話をする、という手順にすると、最も確実に早くクリアできるようです。
なお、どの課でどのタスクを終えたかは、ログイン後の「学習の記録」を見ればわかります。
キャラクターと会話しよう!
キャラクターとの会話では、誰に、どのCan-doで話しかけるかによって、異なるアクションが発生します。アクションは、次のようなものがあります。

- 会話をして終わる
- アイテムをゲットする
- 隠しCG、隠しムービーを見る
- ほかの町に行く
- アバターのスタイルを変える
- ゲームをする
- 「ひみつのじゅもん」をゲットする
など
Can-doは全部で25種類。つまり、23人のキャラクターに対して、25通りの会話があることになります。ということは、全部で23×25=525の会話をすれば、クエストはクリアできるということです。
攻略法!
温泉の卓球ゲームで、おじさんになかなか勝てないという声をいただくことがあります。しかし、おじさんは「ひみつのじゅもん」を持っていて、卓球ゲームに勝たなければ、じゅもんをコンプリートできません。コツとしては、ゲームではマウスをクリックすることでスマッシュが打てますが、タイミングを見てクリックするのではなく、常にクリックをカチカチと連打しながらマウスを動かすと、スマッシュを打てる確率が上がり、おじさんに勝つ確率も上がるようです。
ホニゴンの家に行こう!

「ひみつのじゅもん」を全部そろえたら、ホニゴンの家に行くことができます。「ひみつのじゅもん」は全部で11個。がんばって集めましょう。じゅもんをどれだけ集めたかは、マイタウンの左下の「家」をクリックして確認することができます。
ホニゴンの家に行くことができたら、そのままエンディングを迎えます。エンディングでは、音楽が流れ、賞品をもらうこともできます。
WEB版エリンの公開終了(サイトの移行)まであと少し。最後に「にほんごクエスト」をクリアして、このサイトの思い出を作っていただければ幸いです。
WEB版エリンに関する参考文献
- 赤澤幸(2010)「【第15回】 WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」がオープンしました!」『日本語教育通信』 日本語教育ニュース
- 磯村一弘(2010)「日本語学習と文化理解を目的とした独習型ウェブサイトの開発 -WEB版「エリンが挑戦!にほんごできます。」における理念と実践-」 第15回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム(ブカレスト大学) 『ヨーロッパ日本語教育』 第15号、212-220、ヨーロッパ日本語教師会
- 羽吹幸・長田優子・磯村一弘(2013)「WEB版「エリン」は世界の日本語学習者からどのように受け入れられたか-アンケート調査に見るユーザー評価-」『国際交流基金 日本語教育紀要』第9号
(磯村一弘・羽吹幸/日本語国際センター専任講師)