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「KCクリップ-そのまま見せます!私たちの日本語教育」サイトをリニューアル!
―『日本語ドキドキ体験交流活動集』電子書籍も無料公開しました
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- このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。
2020年7月
国際交流基金関西国際センター
国際交流基金関西国際センター(以下、KC)は、1997年5月に設立された海外の日本語学習者を支援する施設です。仕事で日本語を必要とする方や海外で日本語を学習する方のための訪日研修を実施してきました。また、研修のノウハウを活かして、教材の出版、日本語オンラインコースや日本語学習ウェブサイト、アプリなどのeラーニングの開発も行っています。
「KCクリップ―そのまま見せます!私たちの日本語教育」(以下、「KCクリップ」)は、KCの日本語教育を紹介する、日本語教師向けのウェブサイトです。KCで開発した出版教材やeラーニング教材に関するものを中心に、実際の研修で使用した自作教材やクラス概要、活動例、関連研究や発表などを掲載しています。
公開から10年以上が経過した「KCクリップ」は、2020年、さらに使いやすく、内容も充実させてリニューアルしました。今回は、新しく生まれ変わった「KCクリップ」についてご紹介します。続いて、リニューアルを機に、電子書籍化して無料公開した出版教材『日本語ドキドキ体験交流活動集』についてもご案内します。
1.新しくなった「KCクリップ」を紹介します
「KCクリップ」は、「開発教材」「eラーニング教材」「学習者・研修」「研究・発表」の4つのカテゴリに分かれています。ユーザーは、自分の興味関心にあったカテゴリを選んで見ることができます。今回のリニューアルでは、ユーザーが自分の見たいものを探しやすいように、カテゴリごとに背景色やデザインを変えました。また、「開発教材」や「eラーニング教材」には、それぞれの教材のイメージ画像を追加したので、視覚的にも分かりやすくなっています。スマートフォンでも快適に見られるようになりました。
PC版トップページ
スマホ版トップページ
各カテゴリの紹介
「開発教材」と「eラーニング教材」
「開発教材」は、出版教材と自主制作教材を合わせて5種類あります。「eラーニング教材」は、プラットフォーム、ウェブサイト、アプリを合わせて8種類あります。
開発教材 | eラーニング教材 |
---|---|
<出版教材>
|
<プラットフォーム>
|
それぞれの教材のページについて、「教材説明」「実践例」「関連研究・発表」のコーナーに沿って紹介します。
- (1)教材説明
- 教材の対象者や内容について、スライドや動画などの視覚資料も用いての紹介があり、教材を知らない人でも概要が理解できます。
- (2)実践例
- その教材を使ったKCの研修での実践が見られます。具体的には、コースや活動デザインの実例、担当講師向けの授業説明、教材やワークシートなどのハンドアウト、PPTスライド、評価シート、学習者の成果物などがあります。これらはダウンロードできるので、ユーザーはそのまま授業で使ったり、現場に合わせて加工して利用することもできます。「開発教材」の「実践例」には、教材が手元にない人にも役立つものが多くあります。また、「eラーニング教材」の「実践例」では、KCが開発したサイトやアプリを授業で活用する方法を、具体的に知ることができます。
- (3)関連研究・発表
- 教材について発表した講演などの資料や実践報告書などが読めます。「実践例」の資料やハンドアウトでは知ることができない開発背景や理念、実践内容などが分かります。
「学習者・研修」
「学習者・研修」カテゴリは、KCでの各種実践を「外交官・公務員」「研究者・大学院生」「大学生」「高校生」「看護師・介護福祉士候補者」「海外日本語教師」の対象者別に見ることができます。それぞれのページには、対象者の日本語レベルや研修概要の紹介、「実践例」、「関連研究・発表」があります。特に、「実践例」では、開発教材やeラーニング教材を研修目的や対象者の属性、日本語レベルの違いに応じてアレンジする方法を知ることができるので、おすすめです。例えば、出版教材『初級からの日本語スピーチ』内のトピックを研究者・大学院生向けに「研究について紹介する」としたり、大学生向けには「自分の国の事情を紹介する(私の町、教育問題など)」としたりして、教材をアレンジする例が見られます。ユーザーが自分の学生に合わせたトピックの教材を作成できるように、Wordファイルのフォーマットもダウンロードすることができます。
「研究・発表」
「研究・発表」カテゴリは、「開発教材」「eラーニング教材」「学習者・研修」カテゴリ内の各ページにある「関連研究・発表」コーナーの内容を一つにまとめたものです。今回のリニューアルですべての関連研究と発表が表形式でまとめて閲覧できるようになり、また、教材名や執筆者名などのキーワードでも検索できるようになりました。PDFでダウンロードして読めるものが多数あります。
2.『日本語ドキドキ体験交流活動集』を電子書籍化して無料公開しました
「開発教材」カテゴリで紹介している『日本語ドキドキ体験交流活動集』は、2008年以来、書籍として出版してきましたが、2019年12月に販売を終了しました。そこで、2020年、「KCクリップ」のリニューアルを機に、電子書籍版として無料公開することにしました。
本書は、教室の外のさまざまなリソースを活用し、体験の中で日本語を学ぶための教材です。地域オリエンテーリングやインタビュー、ホームステイなどの活動を取り上げ、(1)教室で準備する、(2)教室の外で行動する、(3)教室にもどって体験をまとめる、という活動の流れを、会話例やワークシートの形で収録しています。また、活動に必要な日本社会の基礎知識を紹介するNipponガイド(PowerPoint版もあります)や、活動を中心としたコースを作るための評価のアイデアやコースデザイン例もあります。
体験交流活動を通じた日本語学習の利点は、「何のために何を学ぶのか」が分かりやすく、学習動機を高められる点です。また、学習の場を教室の外へと広げ、学習者それぞれが個別の活動を行うことで、自分の日本語レベルに合わせた日本語運用体験が可能になります。そして、何より学習者にとっては「楽しい!」というのが魅力です。
本書のダウンロードは「国際交流基金関西国際センター」のサイトから
3.これからの「KCクリップ」…
「KCクリップ」は、KCの日本語教育を日本語教師のみなさんと共有する場です。これからもKCでの新しい取り組みや研究発表を公開していきます。更新情報は、KC公式SNS (Facebook、Twitter)でお知らせします。今回のリニューアルで、全ページにFacebook、TwitterのSNSボタンを設置しました。「いいね!」やコメントなど、みなさまの声もお待ちしております。
(和栗 夏海/関西国際センター日本語教育専門員)