コラム:オフが明けて

8月20日~8月30日にベトナムのハノイで約2週間のワークショップを行いました。以下ワークショップのレポートです。

8月27日(火曜日)

オフ明け、WS開始から約一週間が経ちました。

演奏者の数人は遠出をして観光を楽しんだり、ホテルの部屋でゆっくりするメンバーや、ハノイ旧市街へと足を運ぶメンバーもいた様子です。

スタッフ陣は、舞台で必要となるマットや座布団、ほか、小物を調達しに町へ出かけ、途中、楽器屋さんで鈴を購入しました。

午前中はタイの2人編成の即興曲の稽古。

その裏でラオスチームの楽曲のリズムセクションのパート稽古が行われました。

ラオスのセントン・ブッサディさんが書いてきた楽譜が難しすぎて演奏がなかなか進まず、結局、大島さんがアレンジをし直して、スコアを作り直す、という地道な作業も続きます。

午後は「登山囃子」の稽古から始まり、一人一人の声を聞くというところから始まりました。

みんな、なんとなく歌っているというところ、一人一人の声を聞くということは、やってみた後では演奏者にとっては自信にもなったようでした。

その後、声が良かった4人を選出して小編成での輪唱を試してみたり、より、舞台で使える素材さぐる稽古セッションが続きました。

体も喉もひらいて、オープンに、楽しく唄いましょう、というアドバイスの後からは、皆、声が出るようになって1チーム3~4名、4グループの輪唱の重なりがとても面白い音響に変化していきました。

その後、ミャンマーの楽曲からトリオの楽曲へつなぐ、という試し演奏が行われました。そろそろ、プログラムの並び順など、ある程度の見通しをたてていろいろ試す時期にさしかかっています。そんな中、最近の演奏者の様子をみて、大島さんは「楽譜に忠実に従うことは今は、とても大切なこと。しかし、演奏を楽しむことはもっと重要なので、本番で、そのときの気分でアドリブなどいれたくなったら、気兼ねせずに大いにもりあがってください」とコメントがありました。

まず基礎を頭と身体に叩き込ませ。即興や応用は、そこからになります。もうしばらく、時間がかかりそうです。

8月28日(水曜日)

ワークショップの写真1

いよいよ、クリエイション(創作)の時間も終わってリハーサル、つまり、できたもののクオリティーをさらに上げてプログラム構成を練る作業期間に入ってきました。午前中は、カンボジアのヴタさんが指揮をとり、ミャンマーの若手奏者、ボ・トゥ・レインさんとブルネイのユスリさんから成るのトリオの楽曲の稽古からスタートです。派手な編成ではないのですが、差し迫るような緊張感と息のあった掛け合いが、聞くたびに楽しめる作品に仕上がりました。

続いて、タイのトサポーン・タサナさんによるデュオの楽曲。相手は日本の堀つばささんです。こちらも二人での稽古で、通訳を介しながらスムースにやりとりが進んでいきます。しかし、一つ、堀さんを悩ませるのがダウンビートでカウントを取ることのようで、何度も同じ箇所の稽古が続きます。

これは演奏の技術や表現力ということではなく、それぞれの国の音楽性の違い、ビートの感じ方の違いが顕著に現れた例かもしれません。が、お互いプロのミュージシャン。頭を悩ませながらも音は絡み合い、楽曲が徐々に姿を現します。

午後の最後は選抜チームによるサイギ(日本の「登山囃子」)の稽古。前回の稽古で一人一人の声を聞いて選抜した4名。が、うち一人は自分は歌を人前で歌うことには抵抗がある、とのことで稽古中にメンバーから外れることに。

思わぬ事態でしたが、いやなものを無理やり歌わせることもなく、柔軟に対応しましたが、ミュージシャンが持つストレス、自分の分野でない楽器や担当をうけもつ際のプレッシャーがどのようなものなのか、考えさせられる一面でした。

午後一は久々のオープニングの稽古です。

各国の紹介でもあるそれぞれのソロの入り方、本編へ続く最後の部分をどのように締めくくるか、みんなで頭を悩ませ、いろいろ試しながら構成を固めていきました。

思いのほか、どの国の代表も”日・ASEAN”の40周年記念事業ということと、今回の企画が声と打楽器によるコンサートであることに重きを置いているようで、大島さんから「ここはどうしたらいいと思う?」という問いかけにも、沢山の意見が上がってきます。

オープニングの最後の締めくくりは日本のフレーズを皆で演奏しよう、という意見も多々ありました。試行錯誤を繰り返すうちに、ベトナムチームからの提案でカンボジアのソロのフレーズがノリ易いので、そのモチーフを皆で掛け合いして曲を締めくくろうとのこと。

カンボジアの通訳さんに彼らが唱える言葉の意味を聞いてみると、”Moha Samaki, ASEAN-JAPAN”、直訳するとモハ・サマキは”Great Solidarity”、つまり日本と東南アジアの団結を唱えているとのことで、いよいよコンサートが始まります、というところでは一番、きれいな形におさまりました。

とても長い一日となりましたが、その後も3曲稽古があり、途中、カンボジアの演奏者の一人がお腹不調を訴え残りの稽古を欠席、先にホテルに戻り休養をとりました。皆、タイトなスケジューで体力の消耗も激しい中盤。各国のアーティストにとっては、同じ東南アジアに位置するベトナムでの2週間の滞在ですが、国が異なれば言語も異なり、生活も異なります。

それぞれ、楽譜を頭に叩き込むことと全部で15~6曲の演目を習得すること、そして身体のメンテナンス、コンディショニングの両立は、大変な労力に違いありません。あと一週間、皆が健康でいてくれることを願うばかりです。

[お問い合わせ]

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
文化事業部 アジア・大洋州チーム
担当 : 玄田・松永
電話 : 03-5369-6062

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