第15回 ヴェネチア・ビエンナーレ 国際建築展 (2016) ステートメント

ステートメント

若年層を中心に失業が慢性化し、格差や貧困の度合いが日々昂進している今日の日本において、戦後の「高度経済成長」はもはや遠い過去の歴史的事象のようなものとなっている。近代日本の「経済成長」とともにつくり出された建築作品のいくつかは世界に誇れるものであったが、日本における近代建築の輝かしい成果は、前回のヴェネチア・ビエンナーレの日本館において「現代建築の倉」に収蔵され、「高度経済成長」をピークに生み出された建築作品の数々はすでに歴史家たちの対象となっている。

情報環境を劇的に変化させたインターネットの普及など、われわれの時代の指標となる事象はさまざまにあるが、競争原理をその核にすえた新自由主義は、戦争やテロ、放射性物質による環境汚染などと異なり目の前の脅威としてはとらえにくいものの、いまや社会の隅々にまで浸透してその屋台骨を深く蝕んでいる。

そしてさらに3.11以降の喪失感が加わったなかで日本の社会はいま、大きな転換期を迎えている。このような時代に、われわれの建築はどのようにつくられているのか。そしてまた、どこへ向かおうとしているのか。われわれがいま注目するのは、その多くが、建築のメディアを華やかに飾るようにも、また、これまでの建築の枠組みを大きく変えるようにも、少なくとも表面上においては見えない建築群である。その理由のひとつは、人と人、モノとモノ、そして人とモノの結びつき――すなわち、本展のテーマである「縁」をつくること、「縁」を変えることに重点を置いているから、と考えられる。

本展では、なんらかの旗印のもと、モダン・ムーヴメントに見られたような運動体を形成することなく、直面した状況課題に対して、それぞれ個々に戦われている戦いの多様な様相を見てみようと思う。われわれが置かれた困難な状況を超えて生き延びる(survive)ためのこの最前線(front)での戦いは、まだ胎動を始めたばかりのものが多いかもしれないが、さまざまな結びつき(nexus)に着目しながら生み出された本展の作品群は、社会変革のベースをつくっていく、そんな潜在可能性をもっている。

山名善之
2016年3月28日改定

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