韓国(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は2,998件、教師は15,345名。初等教育は480名で全体の0.1%、中等教育は411,255名で全体の77.4%、高等教育は39,774名で全体の7.5%、学校教育以外は80,002名で全体の15.1%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 現代の韓国における日本語教育は、1965年の日韓国交正常化を契機とするというのが一般的な見方である。
 高等教育においては、国交正常化に前後して大学校(日本における「大学」に相当)に日本語が専攻科目として設置され始め、1970年代以降、時代が下るに従い、大学院修士課程や大学(日本における「短期大学」に相当)の観光関連学科における日本語科目の設置、諸分野の日本研究者による学会創立等の動きを経て、今日に至っている。
 中等教育では、1972年に出されたパク・チョンヒ(朴正熙)大統領の指示により1973年に高等学校の教育課程(日本の「学習指導要領」に相当)が部分改定され、日本語が第二外国語科目の一つとして導入された。以来、高等学校では第二外国語として日本語が教えられている。中学校においても、2001年に第二外国語の一つとして日本語教育が始まった。

背景

 日韓両国が、政治・経済、社会・文化等の多方面において緊密な関係を保ってきたことが、日本への関心の継続と、日本語学習者の新たな世代の登場に繋がっているものと思われる。

特徴

 約53万人の日本語学習人口を擁し、年齢層は小学生から一般成人までと幅広いが、その中心は全学習者数の約8割を占める中学生および高校生である。高等学校では、日本語は第二外国語に指定されている8つの言語の中で最も履修者が多い。一方、大学修学能力試験(大学入学統一試験)で日本語を選択する生徒は少ない。その要因として、戦略的にスコアが取りやすい有利な科目を選ぶ傾向にあることが推測できる。日本語の能力が高い生徒は日本に直接、日本への留学を目指すケースも少なくない。

 高等教育・一般成人教育では、日本の社会や文化に対する直接的・具体的な関心が学習動機となる傾向が強かったが、若者の就職率の低下に伴い、ここ数年は日本への就職を目的に日本語・日本文化を学ぶ学生が増える傾向にある。
 なお、「学院」と呼ばれる民間の教育機関や、各種文化センター、公民館等での日本語教育も盛んである。

最新動向

《大学教育》
 急速に進む少子化の影響により、特に地方の大学においては学生確保に対する懸念が大きくなっている。政策面では、教育部が推し進める「融複合教育」政策により、人文系の基礎と理工系の専門知識を持っている人材、あるいは、その逆の人材を育てる学部・学科への再編が進む一方で、Prime事業*1)によって、人文系から理工系への定員のシフトも同時に起こっており、日本関連学部・学科の一部では、自主的に定員を削減したり、実利的な学科との統合を行うなど、生き残り対策に腐心している。
《自由学期・学年制》
 2013年度に42校の中学校で試験的に実施された自由学期制*2は、年々実施校が増え、2016年度には全国すべての中学校で実施された。実施の結果、一定の成果を上げたことによって、中学校では年間を通して自由学期活動を行う、「自由学年制」の実施が広がっている。一方、高校では、2017年に教育部が発表した、「2022年までにすべての高校を単位制に移行する」という方針に従い、単位制を取り入れる準備が着々と進んでいる。

*1)Prime事業とは、「大学と産業間の人材ミスマッチ現象を解消するため、社会・産業ニーズに適合した学科及び教育課程を運営する大学を選定して支援する」という趣旨を掲げた教育部の代表的な高等教育政策で、具体的には、構造改革によって人文、芸術、体育系の定員を減らして、理工系の定員を拡大するというものである。
*2)「自由学期制」とは、中学1年1学期から2年1学期までの3学期の間の1学期を、「自由学年制」は1年を通じて、職業体験やサークル活動などの体験活動を授業に取り入れるもので、進路体験、主題探索活動、サークル活動、芸術体育活動など大きく4種類に分けられている。自由学期・学年期間中は、基本的に午前は教科授業、午後は参加型・体験型の自由学期活動が行われる。また、筆記試験形式の中間・期末試験は行われず、教師が生徒の成就水準、参加度および態度、自由学期活動内訳などを学校生活記録簿に叙述式で記録する「過程中心の評価」が行われる。

教育段階別の状況

初等教育

《初等学校》
 教育課程においては英語だけが正規科目で、日本語を含む他の外国語は、教育課程上の正規科目ではない。しかし、校長裁量で日本語科目を設置したり、放課後のクラブ活動のなかで日本語を教えたりしている学校がある。また、韓国国内の外国人の急増に対応する「多文化教育」の一環として日本語をはじめとする外国語を教える活動が各地で行われている。2018年度日本語教育機関調査では約500人の学習者が確認できたが、まだ把握できていない地域もあるため実態はもっと多いものと推測される。

中等教育

《中学校》
 「高等学校」参照。
《高等学校》
 中等学校の選択科目には「漢文」「コンピューター」「環境」「生活外国語」の4つ、高等学校の選択科目には「技術・家庭」「漢文」「教養」「第2外国語」の4つがそれぞれある。選択科目の中の外国語は中等学校、高等学校とも日本語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、ベトナム語の8つがある。学校の采配によりどの外国語クラスを設置するかが決まる。
 2011年に施行された「2009年改訂教育課程」(日本の学習指導要領に相当)により第二外国語が必修科目から選択科目に移行した影響で、中等教育の学習者数が大幅に減少するという現象が起きたが、その後は一定した学習者数を維持している。第二外国語が選択科目になったことにより、日本や日本語に少なからず興味を持つ生徒がに限定されることとなったが、その数は安定している。
 韓国における日本語学習者数の減少については少子化の影響も少なからずあるが、就学児童数・生徒数の減少率に比べて日本語学習者の減少の割合は緩やかである。選択外国語の中でも、依然、日本語は一番人気の科目であり、日本語学習離れが加速しているとは一概に言えない。昨今の日韓関係等から見てもかなり健闘しており、希望が持てると言える。

高等教育

 急速に進む少子化の影響により2014年以降、韓国政府は大学の構造改革を進め、高等教育機関は学部・学科の定員の削減や統廃合を積極的に進めている。教育部が推し進める「融複合教育」政策は、人文系の基礎と理工系の専門知識を持っている人材、あるいは、その逆の人材を育てる学部・学科への再編を目指している。それを受け、日本関連学部・学科は定員の削減や実利的な学科との統合を行うなど生き残りを図って来た。また、学生自身も日本語と実利的な他分野の知識・スキルの双方を身に付けることの必要を感じており、日本語・日本文学を専攻する学生が複数の学科を専攻し日本語以外の学位を併せて取得するというケースが増えている。
 なお、インターネットを利用した通信教育大学校(通称「サイバー大学」)は韓国に19機関存在するが、このうち専門課程で日本語を学習できる機関は3か所である。

学校教育以外

 民間企業や官庁に勤務する社会人、大学生、大学院生、中高生まで、学習者層は多岐にわたっている。
 また近年、韓国では日本語を学ぶ目的のうち、日本での就職の比重が高まっている。日本での就職支援に関しては、韓国雇用労働部の全面的なバックアップを受けた大韓貿易投資振興公社(KOTRA
 http://kotra.or.jp/kotra.html)が韓国青年の海外就職支援事業「K-move事業」を展開している。その一環として、2018年から、韓国全国経済人連合会(全経連)国際経営院が、韓国政府の支援を受け、韓国青年の海外(日本)就職支援を目的として、日本語教育を含む研修事業「K-Moveスクール」(約4か月間)を毎年実施している。ソウル日本文化センターは、その中の日本文化研修(1週間)を共催実施しているが、2018年度は参加者20人中14人、2019年度は同30人中18人が日本企業から内定を獲得しており、日本での就職を目指す学生に対する中長期的な支援の成果が表れた事例となっている。

教育制度と外国語教育

教育制度

 6-3-3-4制。
 初等教育(初等学校)が6年間(6~12歳)、中等教育のうち、中学校が3年間(12~15歳)、高校(高等学校)が3年間(16~18歳)。高等教育として、大学(日本における「短期大学」に相当)が2年間、大学校(日本における「大学」に相当)が4年間。
 初等学校、中学校の9年間が義務教育である。

教育行政

 教育政策を統括している教育部は全国の4年制の大学校及び2年制の大学を直接管轄しており、さらに特別市・広域市・道の教育庁(市道教育庁)を管轄している。市道教育庁は、地方自治団体(市庁及び道庁)とは別の独立した行政機関である。市道教育庁は当該地域の高等学校を直接管轄し、さらに当該地域の下部教育庁(ソウル特別市の場合は、ソウル市内各区教育庁)を管轄しており、その管轄下に中学校・初等学校・幼稚園がある。
 また、学校教育の教育課程、及び修学能力試験の問題作成に関しては、独立行政機関である韓国教育課程評価院が取り扱い、大学入試に関する事業は韓国大学教育協議会*5 が取り扱っている。

*5)韓国教育課程評価院は、同院法に基づいて設立され、教育の質的向上を目的として教育課程と教育評価の研究開発等を行う機関。韓国大学教育協議会は、同協議会法に基づいて設立され、大学の教育・運営に関する研究開発等を行う機関である。

教育行政組織図。教育科学技術部が全国の4年制と2年制の大学および特別市・広域市・道の教育庁を管轄。市・道教育庁は当該地域の高等学校の他、当該地域の市教育庁およびソウル市内各区教育庁を管轄しており、その管轄下に中学校、初等学校、幼稚園がある。

言語事情

 公用語は韓国語。

外国語教育

《初等学校》
 3年次から英語が正規授業として取り入れられている。正規授業としての日本語教育は行われていないが、例外的に、済州特別自治道の1校で3年生から6年生までを対象に正規授業として日本語が教えられている。
《中学校》
第一外国語(必修):英語
第二外国語(選択):中学校裁量活動の選択科目の中の自由選択科目(漢文、コンピューター、環境、生活外国語)における生活外国語の一つとして日本語がある。生活外国語には、日本語の他に、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、ベトナム語がある。
《高等学校》
第一外国語(必修):英語
第二外国語:生活・教養科目領域(技術・家庭/第二外国語/漢文/教養)の中から選択する。第二外国語には、日本語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、ベトナム語がある。

外国語の中での日本語の人気

 世界的傾向として認められるが、韓国でも、アニメや漫画を中心とした日本文化の人気は根強い。国際交流基金の日本語教育機関調査からもわかる通り、日本文化に対する興味・関心から日本語を学ぶ学習者はかなりの数に上る。また、地理的に近いことから、気軽に日本旅行を楽しむ韓国人がたくさんおり、日本旅行を目的として日本語を学ぶ学習者も韓国には相当数いる。

大学入試での日本語の扱い

 文在寅政権下で「第二外国語正常化のための教育政策」の一環として、修学能力試験において日本語を含む第二外国語を試験科目から外すことが検討された。これに対し、外国語教育関係者は結束して、実質反対集会となる討論会を開くなどして運動を展開、数回にわたる公聴会が開かれ、「第二外国語は存続、絶対評価に変更」で落ち着いた。第二外国語は、日本語・中国語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ロシア語・アラビア語、ベトナム語(2013年11月実施分から)がある。2019年11月実施の試験では、65,111人が「第二外国語」を選択した。

学習環境

教材

 学習者と学習動機の多様化に伴い、多種多様な日本語教材が出版されている。その中で、10代後半の初級者を対象にした独学書や日本旅行のための会話集の類が、従来主流であったビジネスマンや日本語を専攻する大学生のための教材よりも数多くなっているのが近年の特徴といえる。教材は、イラストがふんだんに使われたカラー版が好まれ、既存の教材の改訂版出版に際してCD-ROM教材を追加する傾向も顕著である。日本語能力試験対策本等の試験本に加えて、日本留学試験対策の教材も目に付くようになった。教材執筆者を見ると、これまで主流であった大学教員に加え、高校教員によるものが出版されるようになってきた。

初等教育

 初等学校では日本語が正規科目ではないため、教育行政機関が指定(国定、検定等)する教科書はなく、韓国の複数出版社から刊行されている、子ども向けの日本語学習書が利用されている。

中等教育

 中等教育では日本語が正規科目として導入されており、中学校、高等学校とも、検定教科書が使用されている。
 中学校では、2015年改定教育課程に準拠した教科書『生活日本語』が2017年3月から使用されている。
 高校についても、2015年改定教育課程に準拠した教科書「日本語Ⅰ」と「日本語Ⅱ」が2018年3月から使用されている。  

高等教育

 大学では、各大学が独自に開発した教材を使用する傾向がある。よって、ある特定の教科書が多く使われるということはない。

学校教育以外

 複数の出版社が数多くの日本語教材を刊行しており、民間日本語学校では、同系列の出版社が刊行する教材を利用する傾向がある。
『まるごと中級1(B1)』の韓国語版が2019年に時事日本語社から出版された。『まるごと中級2(B2)』の韓国語版は2021年に時事日本語社から出版される予定である。

IT・視聴覚機材

 大学や高等学校の教師が中心となったCD-ROM教材の開発が盛んである。中学校・高等学校の教育現場においてもこのようなマルチメディア教材が多用されている。また、インターネット上の学習サイト等も多数ある。

電波・有線放送

 放送通信大学校の授業科目として日本語の授業が放映されている。また、EBS(教育放送)ではラジオ日本語講座番組を放送している。
 さらに、サイバー大学校等の設立により、インターネット配信による遠隔教育が盛んに行われている。2017年度現在、サイバー大学は全国に21機関(4年制-17機関/2年制-2機関/単位制-2機関)ある。

教師

 公立中等教員採用試験について、日本語教員の募集は、2016年は9名、2017年は15名、2018年は一気に52名と大幅な増加が見られたが、その後、2019年には一気に募集ゼロまで落ち込み、関係者を驚かせた。
 2020年度の採用予定者数は49名が予定されており、今後、定年退職者が増えることから、募集者数が増えることも期待している。一方、ソウル、釜山、大邱など大都市の採用者数がゼロであることから、聞き取りなどを行い各地域の情報収集に努めるとともに、今後の動向を見守っていきたい。

●中等第2外国語教員採用者数の推移(私立・障碍者学校枠除く)
 地域 ソウル 京畿 仁川 釜山 大田 世宗 大邱 江原 清北 清南 慶北 慶南 蔚山 全北 全南 光州 済州 合計
2018年度 0 39 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 4 2 2 3 52
2019年度 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
2020年度 0 14 0 0 2 0 0 4 0 4 5 6 0 8 4 0 2 49

資格要件

初等教育

 外国語科目は履修科目となっていないため、日本語教師としての資格は設けられていない。日本語教師の採用は当該校校長の裁量となっている。

中等教育

 下記(1)と(2)の双方を満たすことが条件となっている。

  1. (1)「2級正教師資格証」を有していること。
     以下のいずれかを修めると、「2級正教師資格証」が取得できる。
    《師範大学》
     日本語教育科主専攻
    《その他の大学》
     日本語学が主専攻で、教育学が副専攻 または、教育学が主専攻で、日本語学が副専攻。
     ただし、大学に副専攻制度がない場合、日本語学主専攻の者が資格を得るためには教育大学院(修士、2年半)を修了しなければならない。
  2. (2)以下のいずれかの試験に合格していること。
    《私立高校の場合》
     各校が実施する教師採用試験
    《国公立高校の場合》
     毎年12月に国が実施する任用試験(国家試験)。採用・異動は基本的に市道単位で行われる。中学校教師と高校教師は「中等日本語教師」という一つの採用枠として募集され、試験合格後に配属先が中学校と高等学校に振り分けられる。その後の人事異動で中学校から高校への異動、またその逆も行われる。

高等教育

 日本語学や日本文学を含む日本学専攻者が日本語教育に従事しており、日本語教育学専攻者はむしろ少数である。教育機関の間に共通の資格があるわけではないが、新たに専任講師として採用されるには、最低でも修士号、一般には博士号を必要とする。

学校教育以外

 共通の資格はないが、多くの機関が、韓国の大学校の日本学関連学科卒業、日本の大学の日本語教育関連学科卒業、日本語教師養成講座420時間修了、(公財)日本国際教育支援協会主催の日本語教育能力検定試験合格等を条件に挙げている。

日本語教師養成機関(プログラム)

  1. (1)大学の主専攻コース(師範大学日本語教育学科、文科大学日語日文学科等)
  2. (2)教育大学院(修士課程のみ)

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

初等教育

 済州特別自治道や忠清北道では、韓国人以外の親を持つ子どもに対する二重言語教育(継承語教育)の一環として日本語や日本文化を教える教師がいるほか、放課後授業の一環として保護者が日本語を教える場合も見られる。

中等教育

 済州特別自治道では、道教育庁が複数の日本語ネイティブ教師を期間制で雇用し、複数学校を巡回させる形式で授業を担当させている。また全羅南道や大邱広域市、江原道などでは複数の日本語ネイティブ教師を期間制で雇用し、各校に配属し、授業を担当させている。また、外国語高校や私立学校において、日本語ネイティブ教師を雇用し「日本語会話」「日本語作文」等を担当させている例が見られる。
 「特技適性」(希望者から受講料を徴収して開講する放課後の学習時間)の時間に教えている非常勤日本語ネイティブ教師の例も見られる。

高等教育

 多くの大学で日本語ネイティブ教師が雇用されており、1~2年の短期契約が一般的。大半の教師が「日本語会話」等の授業を担当している。
 なお、外国人日本語教師(主に日本人・在日韓国人)の資格制度は設けられていないが、多くの機関では

  • 日本語教育主専攻、または副専攻卒業
  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • (公財)日本国際教育支援協会主催の日本語教育能力検定試験合格

などを条件に挙げる機関が多く、高等教育機関では、修士号以上の学位取得が条件であるケースが多い。

学校教育以外

 日本語ネイティブ教師は、大規模な日本語学校・予備校(韓国語で「学院」)で雇用されているほか、企業での日本語研修やオンライン授業などで常勤、非常勤で授業を担当している。
 また、日本語能力試験や日本留学試験などの試験対策担当講師として日本語ネイティブ教師の需要がある。資格要件は特に設けられていないが、ほとんどの機関では4年制大学卒業が必須条件で、その他、

  • 日本語教育主専攻、または副専攻卒業
  • 日本語教師養成講座420時間修了
  • (公財)日本国際教育支援協会主催の日本語教育能力検定試験合格

などを必須もしくは優遇条件として課すところもある。
 また、就労に問題のないビザ所持者(永住ビザ、配偶者ビザなど)を条件とする場合が多い。
 企業で教える場合には、韓国語の能力が一定程度求められる場合が多い。

教師研修

 教師を対象とした研修は以下のように分類される。
《資格研修》
 教師の昇進・昇給に影響する教師の等級を上げるための研修(2級正教師→1級正教師)と、本来の専攻科目ではない科目も教えられるようにする研修(副専攻免許)がある。
《職務研修》
 研修を主催する機関が、機関が所在する地区の教育庁の認定を受けて実施する研修。修了者には、15時間につき1学点*7 が与えられる。

*7)学点とは、一般的には大学等の科目履修単位、あるいは科目の成績を意味するが、ここでは研修履修単位を意味する。この学点の数は、昇進等人事考査に利用される。

《自律研修》
 教育庁等の認定を受けずに行われている研修。学点は与えられない。

現職教師研修プログラム(一覧)

 現在、実施されている資格研修と職務研修は、以下のとおり。

1. 《日本語教師1級正教師研修》
 各市道教育庁が実施する研修で、3年以上在職した教師に受講機会が与えられる研修(180時間:30日以上)。同研修の修了者は「1級正教師資格証」を取得し、その資格は昇進・昇給に影響する。各地域の教員を対象とし、管轄教育庁より委託された高等教育機関及び研修機関が実施。資格研修。
2. 《副専攻科目研修》
 各市道教育庁が実施し、本来の専攻以外の科目(日本語)を教えるために受講すべき研修(全450時間以上)。3年以上の教育歴を有する正規教師が受講可。資格研修。
3. 《ソウル日本語教育研究会主催研修》
 職務研修(毎年8月)、自律研修(毎年1月)
4. 《京畿道外国語教育研修院》
 中等日本語教師研修。年2回(1月/11月)日本語教師研修/日本語教師及び他教科教師合同研修。職務研修。
5. 《教育庁主催研修》
 不定期で開催。教授法もしくは日本語能力中心。職務研修。
6. 《国際交流基金ソウル日本文化センター、釜山韓日文化交流協会研修》
 中等日本語教師研修:年1回(7月)職務研修。
 また、訪日研修として以下のもの等がある。
7. 《国際交流基金日本語国際センター 大韓民国中等教育日本語教師研修》
 中等日本語教師研修。毎年7-8月(約4週間)/中学校及び高校日本語教師。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 韓国には多くの人文科学系の日本関連学会が存在するが、日本文学と日本語学の両方を主流とするものが大半であり、日本語教育を含む言語教育を主たる学究対象とした学会は多くない。
 長い歴史を有する全国規模の学会としては、1970年代に発足した「韓国日語日文学会」及び「韓国日本学会」が挙げられる。年複数回開催される両学会の学術発表大会には、全国から多くの日本語学、日本文学、日本語教育を専攻する大学教員が参加している。一方で、各地域の拠点大学を核とした学会や専門分野に特化した学会による独自の活動も行われており、全国で30程度の学会が存在する。
 2002年12月には、韓国内の日本関連学会が連合し「韓国日本学連合会」が発足、国際学術大会を催すなど活動を続けてきたが、2011年末に連合会が再編成され、現在は主に首都圏を中心として活動する学会の連合体である「韓国日本研究団体」と、地方所在学会の連合体である「韓国日本研究総連合会」の2団体が存在する。
 中等教員による日本語教育研究会は、1990年代に各道・市単位で次々と発足し、研究会によって活動内容は異なるが、主に教員研修、教材開発、弁論大会などを行っている。2003年2月には、全国16の研究会が連合した「韓国日本語教育研究会」が発足、毎年2月には各地域の研究会の役員が一堂に会したワークショップの実施、8月には各地域の研究会の代表による「韓国日本語教育研究会授業研究発表大会」が開催されている(2019年は10月に実施)。
 多くの学会、研究会がウェブサイトを有しているが、ウェブサイト上で教材開発、教材提供を中心に行っている教師グループ「JTA(全国日本語教師コミュニティ)」も存在している。

日本語教師等派遣情報

国際交流基金からの派遣(2020年10月現在)

日本語上級専門家

ソウル日本文化センター 1名

日本語専門家

ソウル日本文化センター 2名(うち1名は釜山(嶺南地域)担当)

日本語指導助手

ソウル日本文化センター 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 なし

シラバス・ガイドライン

《中等教育課程の改正》
 日本の初中等教育の学習指導要領に相当するものとして、韓国には「教育課程」がある。1968年の第1次教育課程からほぼ5年ごとに公布され、2002年には第7次教育課程が出された。その後2007年には、第7次教育課程の改定が行われた。その後は5年ごとではなく、必要に応じて改定することとなったため、第8次教育課程とは言わず、2007年改定教育課程と呼ばれている。
 2007年改定教育課程は、第7次教育課程の特徴であった、コミュニケーション機能の重視、学習者中心、異文化理解や交流態度の重視などを踏まえつつ、「第7次教育課程の細分類化」「文化教育の強化と再分類化」「基本語彙と意思疎通(コミュニケーション)基本表現の修正」が主な変更点であり、全体的にみると文化の教育を重視する傾向がある。
 2007年改定教育課程は、中学校では2010年度から、高等学校では2011年から適用されることになっていたが、その後2009年12月にも2009年改定教育課程が公布された。この改定の最大の特徴は、政府が外国語教育政策の原則としている「英語重視」をさらに推し進めたものになっていることで、高校での第二外国語は必修科目を外れ、生活・教養科目領域(技術・家庭、第二外国語、漢文、教養)からの選択必修科目に変更されることになった。
 また、学校教育において、昨今、注目されている「21世紀型スキル」を目指す教育については、韓国においても『2009年改訂教育課程』の中に「関心力量(キー・コンピテンシー)」という名称で言及されている。各科目・各授業を通じ、6つの能力((1)自己管理、(2)知識・情報の処理能力 (3)創造的な力、(4)審美的な感性、(5)コミュニケーション力、(6)共同体への貢献)を育む教育の在り方が模索されている。

評価・試験

 国際交流基金が実施する日本語能力試験、独立行政法人日本学生支援機構が実施する日本留学試験のほかに、民間の出版社等が行う日本語能力判定試験が複数ある。また、日本語は、大学受験のための「修学能力試験」における第二外国語の選択受験科目の一つでもある。(→修学能力試験については、「教育制度と外国語教育」参照。)

評価・試験の種類

1.《日本語能力試験(JLPTJapanese-Language Proficiency Test)》
  主催団体:国際交流基金
ソウル:JLPT日本語能力試験ソウル実施委員会
釜山:(社)釜山韓日文化交流協会
済州:済州商工会議所
URL:http://www.jlpt.or.kr/(ソウル圏)
URL:http://www.bsjlpt.or.kr/(釜山圏)
URL:http://www.jejujlpt.or.kr/(済州圏)
2.《JPTJapanese Proficiency Test)》
 聴解試験及び読解試験(日本語能力試験とは異なり、全受験者が同一の問題を受験)。主催団体がJPTとJLPTの両方を受験した者を対象に調査し、JLPTの各レベルに対してのJPTのスコア分布をウェブサイトに掲載している。
主催団体:YBM Sisa.com
URL:http://exam.ybmsisa.com/jpt/japan/japan01_1.asp
対象:限定せず。
3.《SJPT(Spoken Japanese Proficiency Test)
 韓国初のCBT(Computer Based Test)方式の日本語スピーキングテストで、日本語学習者の話す能力を直接的に評価することができるとしている。
主催団体:YBM Sisa.com
URL:http://exam.ybmsisa.com/sjpt/abo_profile.asp
対象:限定せず。
4.《FLEX(Foreigner Language Examination)※2005年より実施》
主催団体:大韓商工会議所、韓国外国語大学FLEXセンター
URL:http://flex.hufs.ac.kr/
対象:限定せず。
5.《日本語検定 ※2011年より韓国実施》
 日本語総合能力を評価するための試験。語彙、文法、敬語、表記、漢字、意味など日本語運用能力に関する6つの項目で評価。日本語を母語とする人及び日本語を第二外国語として学習する外国語学習者を評価対象にする。(2017年現在韓国内では2、3、4、5級受験可能)
主催団体:日本語検定委員会/YBM Sisa.com
URL:http://exam.ybmsisa.com/nihongo/index.asp
対象:限定せず。
6.《SNULT(Seoul National University Language Test)》
 TEPS管理委員会主催、ソウル大学校言語教育院出題の外国語能力試験。難易度の最も低い問題はJLPTN5のレベル、最も高い問題はJLPTのN1より高度の語彙力、文法的知識が必要としている。 2008年8月から実施。点数制(100点満点)である。
主催団体:TEPS管理委員会
URL:http://www.teps.or.kr/Teps/info/snult_info.aspx
対象:限定せず。
7.《BJT(ビジネス日本語能力テスト)》
主催団体:日本漢字能力検定協会
URL:http://www.bjttest.com/
対象:限定せず。

日本語教育略史

1960年代
1961年 韓国外国語大学校に日本語科開設
1962年 国際大学校(現在の西京大学校)日本語科開設
1963年 第2次教育課程公布(~1974)高校での第二外国語(英語・ドイツ語・フランス語・中国語)履修開始
1968年 在釜山日本国総領事館に日本語講座開設
1970年代
1972年 2年制大学への観光科設置を機に、日本語関連専攻学科の開設に弾み
韓国外国語大学校大学院に日本語科開設
1973年 韓国日本学会 創立
国立慶尚大学校師範大学(教育学部)に日本語教育科開設
第2次教育課程の第2次部分改定 高校の第二外国語科目が必修化、5言語(ドイツ語・フランス語・スペイン語・中国語・日本語)から選択となる
1974年 第3次教育課程公布及び施行(~1981)
1975年 ソウル大学校等が入試本考査から日本語を除外の意志表明
1976年 「大学入学予備考査(1968~1980)」の外国語選択科目に日本語が加わる。
1977年 在韓日本国大使館公報文化院に日本語講座開設
1978年 韓国日語日文学会 創立
1979年 国立慶尚大学校教育大学院に日本語専攻開設
1980年代
1981年 「大学入学学力考査(1981~1993)」(「大学入学予備考査」改め)への一本化、大学別の本考査の廃止
テレビ日本語講座(KBS3)放送開始
第4次教育課程公布
1983年 全国高校日本語教師を対象とする「1級正教師」資格研修開始(国立慶尚大学校)
1984年 第4次教育課程施行(~1987)
1986年 大学入試において第一外国語(英語)と第二外国語が分離
第二外国語科目(ドイツ語・フランス語・スペイン語・中国語・日本語)のなかで日本語の学習者数が第1位となる
1987年 教育改革により、高校において第二外国語科目か実業科目(農、工、商、水産、家庭)のいずれかを選択する方式に変更
1988年 第5次教育課程公布(~1995)
教育改革の修正、高校において第二外国語と実業科目を異なる選択群に戻す
1990年代
1990年 第5次教育課程施行
1992年 第6次教育課程公布
ソウル大学校等が入試本考査の第二外国語から日本語のみ除外を発表
1994年 「大学修学能力試験(1994~現在)」(「大学入学学力考査」改め)で第二外国語科目を除外
1996年 第6次教育課程施行(~1995)
1997年 第7次教育課程公布(~現在)
ラジオ日本語講座(EBS)放送開始
1998年 「2001年度大学修学能力試験」より第二外国語科目(日本語を含む)を選択科目として採用する旨発表
2000年代
2000年 「2001年度大学修学能力試験」(大学入試)の実施
「高等学校日本語教師特別養成課程」の設置(2001~2002年の2ヵ年間)
2002年 第7次教育課程施行(~現在)
中学校の選択科目に日本語を含む第二外国語が編入
「大学修学能力試験」に第二外国語が選択科目として導入される
韓国日本学連合会(5つの日本関連学会の連合)の発足
2003年 韓国日本語教育研究会(中等日本語教師会の全国連合)の設立
「第1回全国連合学力評価」(大学修学能力試験の模試。高校2年生対象)の実施
2007年 2007年改定教育課程告示
2008年 李明博大統領就任後の行政機構改編により、教育人的資源部が教育科学技術部に
2009年 2009年改定教育課程告示
2010年代
2011年 2009年改定教育課程施行 第二外国語は生活教養科目の一つと位置付けられ、必修科目から外れる
2012年 韓国日本学連合会が再編成され、「韓国日本研究団体」と「韓国日本研究総連合会」の2団体が設立
2015年 2015年改訂教育課程告示
2017年 2015年改定教育課程施行

参考文献一覧

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