マレーシア(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は212件、教師は485名。初等教育は45名で全体の0.1%、中等教育は19,417名で全体の49.5%、高等教育は14,720名で全体の37.5%、学校教育以外は5,065名で全体の12.9%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 マレーシアにおける日本語教育は戦中の日本統治時代から行われ、マレーシアから「南方特別留学生」が日本に留学した。
 戦後、1966年にマラヤ大学人文社会科学部で日本語講座が開講され、その後、各大学でも日本語教育が行われるようになった。マラヤ大学では1982年に日本留学予備教育課程が設けられ(当初2年間は文系のみマレーシア国民大学で実施)、日本留学のための日本語教育が開始された。1998年にはマラヤ大学言語学部に日本語専攻コースが設けられた。
 また、1984年には、全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)でも日本語が外国語選択科目として教えられるようになった。これに対応するため、初等・中等教員を日本の大学に留学させ日本語教育関係の学位(学士)を取得させる日本語教師養成プログラムが、マレーシア人事院により1990年に開始された。同プログラムは、1998~2002年の一時中断を経て2008年まで継続された(2013年に最終期生が帰国、通算留学者数156名)。また、2005年には一般全日制中等学校(デイスクール)にも日本語教育(を含む国際語科目)が拡大されたことに伴い、より多くの日本語教師を早期に養成する必要が生じたことから、主にマレーシア国内の研修で日本語教師を養成するプログラムがマレーシア教育省により2005年9月に開始された。 このプログラムは2013年修了の第6期生までで67名が修了し、各地の中等学校で日本語を教えている。以降、新規教員養成は中断していたが、2019年7月より教員養成大学校国際語キャンパスにて「日本語教員養成プログラム」が再開された。このプログラムは、日本語能力が日本語能力試験N2以上で、学士号を持つ35歳未満の者を対象とし、一年間日本語教授法コースを実施した後、数か月から半年間、マレーシア各地の中等学校で実習を行うことで日本語教師を養成するというものである。毎年15名の教員を養成する3か年計画として開始された。

背景

 1981年7月に就任したマハティール首相(当時)は、マレーシアの国造りのため、日本や韓国をモデルとして人材を養成する構想を発表した。これはその後、東方(ルック・イースト)政策と呼ばれ、大学や高等専門学校への留学、産業技術研修生派遣など多様な事業が行われている。

特徴

 東方政策により、日本留学を目標としたいくつかの予備教育プログラムがある。一般に日本に対する興味・関心は強いが、予備教育以外の日本語教育は初級が中心である。中等教育段階における学習者数が全体の約半数を占めている。

最新動向

  • 2017年、中等学校において新シラバスが施行され、2017年入学の1年生から適用されている。新シラバスに基づいた教科書は、1年生~3年生までで1冊、4年生、5年生で1冊の計2冊となり、1~4年生では導入済み、2021年にはすべての学年で導入予定。
  • 上述のとおり、2019年7月から「日本語教員養成プログラム」が再開され、第1期15名、第2期8名の養成が進行中。
  • 2018年度海外日本語教育機関調査結果によると、マレーシアでは「その他教育機関」での学習者が前回調査比+52%と大幅に増加した。同じ調査で学習者総数の伸びが+18%である点からも、これは驚異的な伸びと言える。背景としては、スマートフォンの普及によりオンラインでの日本語学習が急速に広がっていることや、民間日本語学校においてもICTを効果的に活用した授業を行うところが現れており社会人などが場所や時間に縛られずに学習可能な環境が整ってきたことなどが挙げられる。

教育段階別の状況

初等教育

 クアラルンプールのSayfol International School、ペナンのThe International School of Penang(Uplands)といったインターナショナルスクールでは、初等教育段階の児童を対象とした日本語クラスが開講されている。またNGOやいくつかの民間日本語学校では、子供向けの日本語講座を開講しているとの情報あり。

中等教育

 1984年に、東方政策の一環として、ブミプトラ(マレー人及びその他のマレーシア先住民)の優秀な生徒を集めた全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)において国際語選択科目として日本語教育が開始された。2005年には全日制中等学校(デイスクール)13校にも日本語教員が赴任し、日本語教育が開始された。同年、国際語教育が4年制から5年制に改定され、現在に至る。2020年10月現在、55校前後のレジデンシャルスクールで選択必修科目として、75校前後のデイスクールで選択科目として、日本語が教えられている(教師が進学中などで実質日本語の授業が開講されていない学校を含む)。このほか、中華系の私立中等学校(華文独立中学)のなかには、課外活動(部活動)として日本語学習の機会を提供している学校がいくつかある。
 カリキュラムは、2017年1月より、“Dokumen Standard Kurikulum dan Pentaksiran Bahasa Jepun”(日本語カリキュラムと評価のスタンダード)が施行された。新カリキュラムでは、これまでに引き続き21世紀スキルの育成がうたわれているが、特に高次思考能力の育成や探求型学習を推奨している点と、パフォーマンス評価が導入される点に特徴がある。
関連情報:レジデンシャルスクールにおける日本語教育の詳細

高等教育

日本留学のための予備教育

 中等教育修了者を対象とする日本留学のための予備教育が、以下の4機関で行われている。

  • Rancangan Persediaan Khas ke Jepun, Pusat Asasi Sains, Universiti Malaya(通称Ambang Asuhan Jepun、AAJ) マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース
    ブミプトラ(マレー系及びその他のマレーシア先住民族)を対象に、2年間の予備教育を経て、日本の学部(1年次)に入学。本プログラムにより、これまでに3,900名を超える学生が日本に留学している。
  • Kumpulan Teknikal Jepun(KTJ), INTEC Education College INTEC教育カレッジ東方政策プログラム高等専門学校予備教育コース
    1983年に開始された、高等専門学校へのマレーシア政府派遣留学プログラム。中華系、インド系などブミプトラ以外にも開かれており、2年間の予備教育を経て、日本では高等専門学校3年次に編入。当初は日本国内で予備教育を実施していたが、1992年にマレーシア工科大学(UTM)クアラルンプールキャンパスに設置された高等専門学校予備教育センターでの実施に切り替わり、さらに2009年度からはマラ工科大学(UiTM)国際教育センター(INTEC;2013年にINTEC教育カレッジに改編)で実施されている。INTECに移管された2009年度からこれまで、800名を超える学生が日本に留学している。
  • Malaysia Japan Higher Education Programme(MJHEP), Yayasan Pendidikan MARA マラ教育財団マレーシア日本高等教育プログラム
    円借款を受けて1993年に開始されたマラ教育財団ジャパン・マトリキュレーション・センター(JMC)、のちの日本マレーシア高等教育大学連合プログラム(JAD)を前身とする、ツイニング形式による大学(学部)への留学プログラム。日本留学時は学部3年次に編入。2011年の新入生からは円借款を卒業し、マラ教育財団の資金で実施されており、これまで約1,000名の学生が日本に留学している。ただし、2019年には新規インテイクを停止し、2020年より、マラ教育財団の資金による同様のツイニング形式留学プログラムが、Universiti Kuala Lumpur Malaysia, Japan Universities Programme(UniKL JUP)で実施されている。
  • Institut Bahasa Teikyo(IBT) 帝京マレーシア日本語学院
    1998年に開校、私費留学生及びマレーシア政府派遣留学生を対象に大学(学部)留学予備教育を実施。2年間(私費留学生向けには1年間のコースもあり)の予備教育を経て、日本の学部(1年次)に入学。
一般高等教育

 国立大学20校のうち、次の19校で日本語教育の実施が確認されている。(アルファベット順)

  • Universiti Islam Antarabangsa Malaysia(UIAM、マレーシア国際イスラム大学)
  • Universiti Kebangsaan Malaysia(UKM、マレーシア国民大学)
  • Universiti Malaya(UM、マラヤ大学)
  • Universiti Malaysia Kelantan(UMK、マレーシア・クランタン大学)
  • Universiti Malaysia Pahang(UMP、マレーシア・パハン大学)
  • Universiti Malaysia Perlis(UniMAP、マレーシア・プルリス大学)
  • Universiti Malaysia Sabah(UMS、マレーシア・サバ大学)
  • Universiti Malaysia Sarawak(UNIMAS、マレーシア・サラワク大学)
  • Universiti Malaysia Terengganu(UMT、マレーシア・トレンガヌ大学)
  • Universiti Pendidikan Sultan Idris(UPSI、スルタン・イドリス教育大学)
  • Universiti Putra Malaysia(UPM、マレーシア・プトラ大学)
  • Universiti Sains Islam Malaysia(USIM、マレーシアイスラム科学大学)
  • Universiti Sains Malaysia(USM、マレーシア科学大学)
  • Universiti Sultan Zainal Abidin(UniSZA、スルタン・ザイナル・アビディン大学)
  • Universiti Teknikal Malaysia Melaka(UTeM、マレーシア・マラッカ技術大学)
  • Universiti Teknokogi Malaysia(UTM、マレーシア工科大学)
  • Universiti Teknologi MARA(UiTM、マラ工科大学)
  • Universiti Tun Hussein Onn Malaysia(UTHM、マレーシア・トゥン・フセイン・オン大学)
  • Universiti Utara Malaysia(UUM、マレーシア北大学)

 このうち、日本語専攻があるのはUM(マラヤ大学)言語学部のみである。USM(マレーシア科学大学)での日本語教育は副専攻として言語翻訳センターで行われてきたが、このセンターが2008年11月に言語リテラシー翻訳学部に昇格した。また、2005年からUMS(マレーシア・サバ大学)、2016年からUIAM(マレーシア国際イスラム大学)において、副専攻として日本語教育が行われている。UiTM(マラ工科大学)、UUM(マレーシア北大学)、UMK(マレーシア・クランタン大学)、UMS(マレーシア・サバ大学)、USIM(マレーシアイスラム科学大学)では、日本語が選択必修科目となっている。国立大学に限らず、Politeknik Ungku Omar等技術専門学校、Universiti Multimedia(MMU、マルチメディア大学)、Universiti Tunku Abdul Rahman(UTAR、トゥンク・アブドゥル・ラーマン大学)、Kolej Tunku Abdul Rahman(KTAR、トゥンク・アブドゥル・ラーマン・カレッジ)、Taylor's University(テイラー大学)、International University of Malaya-Wales(マラヤ・ウェールズ国際大学)等私立大学、University of Nottingham Malaysia Campus(ノッティンガム大学マレーシアキャンパス)等外国大学のマレーシアキャンパスでも日本語教育が行われている。

学校教育以外

 各地の日本語協会や民間学校、公的機関が運営する教育機関、日系企業(社員教育として実施)で教えられている。
 1968年創立のマレーシア日本語協会(クアラルンプール)や1982年設立のペナン日本語協会(ペナン)、1986年設立のペラ・マレーシア日本友好協会(イポー)などのNGOは、日本語講座の開講や日本文化紹介を通じて地域の日本語教育推進の役割を担ってきた。2020年10月現在も、それぞれ日本語能力試験(クアラルンプール会場、ペナン会場、イポー会場)の実施機関となっている。
 民間学校は、クアラルンプール周辺をはじめとして多数存在するが、その多くが初級(JLPT N4合格程度)レベルのクラスを開講しており、中級レベル以上のクラスを開講している学校は限られている。他に、日本留学を目的とした学習者を対象としたコースを開講している学校、プライベートレッスンや企業へ教師を派遣している学校もある。
 日系企業内の社員教育は、上述のような民間の日本語学校に委託したり、非常勤の日本語教師を迎えたりして行われていることが多い。
 そのほか、クアラルンプール日本人学校では、小学校や中学校の先生たちがボランティアで日本語を教えている。また、クアラルンプール日本人会では、在留日本人ボランティアによる日本語講座がある。

教育制度と外国語教育

教育制度

 6-5制。
 小学校は6年間(6~11歳)で、国民学校と国民型学校の2つのタイプがある。国民学校では、教育言語はマレー語で、英語は必修となっている。国民型学校は、教育言語の違いでさらに2つのタイプに分かれ、中国語国民型とタミール語国民型があるが、マレー語は必修科目になっている。
 中等教育では、教育言語は一律マレー語となり、5年間(12歳~16歳。国民型学校の卒業者でマレー語力が不十分な者は、1年間の移行学級を経て13歳~17歳)で、前期(フォーム1~3、各1年間)と後期(フォーム4~5、各1年間)に分かれる。なお、中等教育機関のエリート校である全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)がマレーシア全土に69校ある。また、公的な中等教育機関の枠外に、独自のカリキュラムを用いて中国語で授業を行う6年制の私立中等学校(「華文独立中学」とよばれる)も存在する。
 高等教育機関としては、ポリテクニック(2~3年間、総合技術専門学校)、師範学校(4年間、初等中等教育の教師養成)、カレッジ(2~3年間)、大学(3~6年間)がある。このうち、ポリテクニック、師範学校、カレッジへは中等教育終了後すぐに進学することができるが、大学に進学する場合は、大学進学前準備教育課程であるフォーム6(一部の中等学校において実施、1.5年間)を経なければならない。成績優秀な学生(但し、ブミプトラ優先)は、フォーム6課程に代えて大学予備教育機関(マトリキュレーション・コース、1~2年間)を修了することでも進学が可能である。
 進級・進学の可否及び進学先は、全国統一試験の結果による。全国統一試験を受けるのは、小学校6年次のUjian Pencapaian Sekolah RendahUPSR、初等教育到達度試験)*、中等教育3年次のPenilaian Menengah RendahPMR、前期中等教育評価。2013年の実施を最後に廃止、Pentaksiran Tingkatan 3(PT3)という学校ごとの評価制度に移行)、5年次のSijil Pelajaran MalaysiaSPM、マレーシア教育証書=中等教育修了試験)、フォーム6の2年次のSijil Tinggi Persekolahan MalaysiaSTPM、マレーシア学校教育高等証書=大学入学資格試験)である。(*但し、初等教育から中等教育への進学可否はUPSRの結果に影響されない。)
 華文独立中学は、修了時に独自の統一試験Unified Examination CertificateUEC)を実施している。マレーシアの国立大学への進学のためには別途STPMを受験する必要があるが、海外留学の場合、受入国・大学によってはUECの結果を中等教育修了資格として認めている。

教育行政

 2004年の省庁再編で従来の教育省は「教育省」と「高等教育省」に分割、2013年に再び両省が「教育省」に統一されたが、2015年に「教育省」と「高等教育省」に再分割。
 その後、2018年に「教育省」に再統一されたが、2020年3月に再々分割。
 なお、留学政策については人事院が管轄している。

言語事情

 マレー語が国語であり、公用語になっている。
 その他、中華系住民の間では中国語(広東語、福建語、客家語等含む)、インド系住民の間ではタミール語等、その他各民族の言語が使用されている。英語も広く使われている。
 初等教育では中国語(北京語)、タミール語を教育言語とする学校の存在が認められているが、中等教育以降は私立学校を除いてマレー語が教育言語となる。2003年入学者より、英語力の強化を目的として、数学と理科については英語による教育に切り替わったが、両教科の授業に支障が出ているとの批判やマレー語の地位強化の観点から、2010年入学者より両科目の教育言語を順次元に戻すことが決定され、それ以前からの入学者についても移行期間として学校裁量によりいずれかの言語もしくは両言語併用で授業が行われている。ただし、英語の授業時間数が増やされるなど、英語力の強化は引き続き重視されている。

国際語教育

 多民族国家のマレーシアは、複数言語が日常生活の中で使用されていることから、「国際語教育」という位置づけで言語教育が行われている。初等教育から英語が必修。
 中等学校のうち全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)は、必修の英語に加え、アラビア語・ドイツ語・フランス語・中国語・日本語・韓国語(2015年開始)の6言語のうち1言語が選択必修となっている(但し、一部の学校ではアラビア語も必修になっているため、アラビア語を除く言語が選択対象科目となっている)。一般中等学校(デイスクール)では、国際語は、日本語・フランス語・ドイツ語・韓国語のうち1言語が学校裁量で決められた上で、希望する生徒が受講する。なお、マレーシア国内の民族の言語として、中国語、タミール語等も一定数以上の生徒の父母の希望があれば開講されることになっている。

国際語の中での日本語の人気

 1984年に中等教育機関6校で開始された日本語教育は、2020年10月現在約130校で行われている。日本語を選択希望する生徒は少なくないが、学校側ではそれぞれの国際語の履修者を均等にしようとしているところもある。大学では、学習希望者は多いが教師の数が足りないのが実情である。一方、学校教育以外においては経済面・文化面での存在感を背景に中国語や韓国語の人気が上昇しており、日本語の人気は相対的には以前より低下している。

大学入試での日本語の扱い

 大学の一般的な入学要件は、大学進学前準備教育課程であるフォーム6終了時に行われるSTPMに合格していることである。この試験科目に日本語は入っていない。なお、大学予備教育機関(マトリキュレーション・コース)の学生はSTPMを受けずに大学に進学する。
 フォーム6や大学予備教育機関への進学は中等教育終了時に行われるSPM合格が前提になる。2014年より、日本語もこの試験科目に入っているが、進学判定に関わる科目とはなっていない。(STPMはAレベル、SPMはOレベル相当の試験と認定されており、学習期間が中等教育での5年間しかない国際言語科目(日本語を含む)はこれらのレベルに到達できないため。)

大学入試での日本語の扱い
STPMに採用されている言語科目: 英語(必修)、アラビア語、中国語、タミール語
SPMに採用されているマレー語以外の言語科目: 英語(必修)、アラビア語、中国語、タミール語、パンジャブ語、イバン語、フランス語、日本語、ドイツ語(進学判定に関わる科目外)

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育を行っている公的な初等教育機関の存在は確認されていない。

中等教育

 2008年度に施行された旧カリキュラム“Sukatan Pelajaran Bahasa Jepun”(日本語指導要綱)準拠教科書は、1~5年生用が使用されていた。また、2010年度国際交流基金日本語国際センター上級研修に参加した中等学校教師によって同教科書1年生用の指導の手引が開発され、2011年1月に全校教師に配布された。国際交流基金クアラルンプール日本文化センターはこの指導要綱に準拠した教授用リソース(2~4年生用)を制作し、各校教師に配布した。
 その他の副教材などは、主に国際交流基金の寄贈により、年少者向けに日本で開発されたものが多く使用されている。
 2017年より施行されている新カリキュラム“Dokumen Standard Kurikulum dan Pentaksiran Bahasa Jepun”(日本語カリキュラムと評価のスタンダード)に準拠した教科書は、1~3年生用が1冊にまとめられており、2017年入学生より使用が開始された。4、5年生用も1冊にまとめられ、2020年1月から使用が開始されている。

高等教育

 『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)が最も多く使われている。一方で、特に選択科目の短い学習時間数で日本語を教える大学を中心に、『まるごと日本のことばと文化』(以下『まるごと』)を教材として使用する機関が増え始めている。そのような中、『まるごと』の更なる普及と学生の経済的負担軽減等を目的に、国際交流基金の働きかけにより『まるごと』マレーシア版の出版が進められ、2017年9月には同教材の「入門」、2019年8月には「初級1」が出版された。いずれもマレーシアで日本版を購入する場合の半額程度で購入することができる。

学校教育以外

 『みんなの日本語』(前出)が最も多く使われている。民間日本語学校では、カンパニーレッスンと呼ばれる企業単位での日本語クラスで、前述の『まるごと』が使われているケースもある。

IT・視聴覚機材

 中等教育段階では、教育省が「VLE Frog」というオンライン上のプラットフォームを提供していて、主に生徒との連絡や、宿題課題の提出、教材の閲覧、生徒同士、教員とのコミュニケーションなどに活用されていたが、2019年半ばで当該プラットフォームと利用は終了し、2020年10月現在、代替プラットフォームの使用は確認されていない。ただし、同様のプラットフォームは高等教育多く使われている。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育を行っている公的な初等教育機関の存在は確認されていない。

中等教育

 マレーシアの初等・中等学校の教員免許がある者。教員免許取得の条件としては、

  • 教員養成大学校(IPGInstitute Pendidikan Guru / Teacher's Training Institute)、スルタン・イドリス教育大学(UPSI)またはその他の国立大学教育学部卒業(学位取得)
  • SPMにおけるマレー語の成績が所定の基準以上であること。

 日本語科目担当教師に関しては、上記の条件に加えて、マレーシア教育省が指定する日本語教員養成プログラムの修了が必要となる。マレーシア人事院が1990年に開始した、日本の大学に留学し学位を取得する教員養成プログラム(2008年派遣終了)に代わり、2005年からは主にマレーシア国内での研修により日本語教員を養成するプログラムがマレーシア教育省により実施されてきた。同プログラムは2013年をもって一次中断していたが、2019年7月から改めて「日本語教員養成プログラム」が再開された(詳細は後述)。

高等教育

 各大学によって異なる。日本語教育の知識、経験が求められる場合もあれば、大学を卒業し、日本語の知識があればいいという場合もある。しかし、最近では、修士号を持った教師が増えている。在職中に修士課程に通う教師もいる。昇進の条件として博士号が必須となりつつあることから、博士号取得を目指す教師も増えている。

学校教育以外

 特に資格の定めはないが、日本語教育能力検定試験合格や養成講座420時間修了が採用条件となっている場合が多い。マレーシア人については日本滞在経験者、日本語の運用力の高い者が雇用される傾向が強い。

日本語教師養成機関(プログラム)

  • Institut Pendidikan Guru - Kampus Bahasa AntarabangsaIPG-KBA,教員養成大学校国際語キャンパス、旧IPBA/Institut Perguruan Bahasa-bahasa Antarabangsa 国際言語教員養成所)
     中等教育における日本語教育の拡大に伴う教師の需要を満たすべく、2005年から2013年まで、日本語教員養成コースを実施した。このコースは、すでに中等教育機関での教員資格を有する教師を対象に、12週の日本語集中コースののち、1年間の本コース(日本語、教授法)を実施し、このコース修了後1年間マレーシア国内の中等学校でインターンシップを行い、最後に2か月の訪日研修(国際交流基金日本語国際センター)を経て、日本語教師を育てようとするものである。毎年15名の教員を養成する5か年計画として開始されたが、当面の教師需要を満たすため、さらに2期にわたって実施することが決定された。しかしながら、2013年に第6期生が修了したのち、第7期生の養成は行われなかった。これまでの同コースの修了生は67名。以降、新規教員養成は中断していたが、2019年7月から「日本語教員養成プログラム」が再開された。このプログラムは、日本語能力がN2以上で、学士号を持つ35歳未満の者を対象とし、一年間日本語教授法コースを実施し、その後数か月から半年間マレーシア各地の中等学校で実習を行うことで日本語教師を養成するというものである。毎年15名の教員を養成する3か年計画として開始され、2020年10月現在、第1期15名、第2期8名の養成が進行中。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

初等教育

日本語教育を行っている公的な機関の存在は確認されていない。

中等教育

 全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)には1984~2001年の18年間、JICA海外協力隊の日本語教師隊員が派遣されていた。合計104名派遣され、中等教育段階における日本語教育の基礎作りを担った。1995年以降、日本留学により養成されたマレーシア人日本語教師が各校に配属されるのに伴い、マレーシア人教師と日本人教師が協働で日本語科目を担当するようになった。JICA海外協力隊の派遣が終了した2002年以降、中等学校には日本人教師はいない。但し、2009年よりJENESYS若手日本語教師派遣プログラムにより派遣された若手日本語教師が毎年約10か月ずつ一部の中等学校に配属され、マレーシア人教師を補佐する役割を果たしたが、同プログラムは2011年派遣をもって終了した。また、教師ではないが、2015年より「日本語パートナーズ」プログラムが2020年までの5年間の時限プログラムとして開始され、日本人がマレーシア各地の中等学校に派遣されている。第1期8名、2期20名、3期30名、4期27名、5期25名、6期25名、計135名のパートナーズがマレーシア人教師の補佐として、日本文化の紹介などを実施。

高等教育

 大学では、以前はマレーシア人の教師が少なかったため、ネイティブの日本人が大学の直接雇用で採用されていた。しかし近年では、マレーシア人教師の採用が増加し、予備教育を除いた高等教育機関全体の教師のうち、マレーシア人教師の割合は8割以上となっている。マレーシア人教師だけの機関も7割近くある。一方で予備教育機関は日本人教員の割合が高く、全員が日本人教員という機関も存在する。

学校教育以外

 比率ではネイティブ教師数が約5割となっている。民間日本語教育機関では教師が日本人だけのところもある一方、非営利機関ではマレーシア人教師が多数を占める機関が多い。採用においては、日本語教育能力検定試験合格や養成講座420時間修了が条件となっている場合が多い。非ネイティブかネイティブかの特性を生かした役割の棲み分けをしているところは多くない。

教師研修

国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(以下JFKL)日本語教師研修コース

 JFKLで開催する教師研修会は以下の2種類。1)土曜研修会: 1回3時間程度のテーマ別の単発研修会。年4回程度開催。2)集中研修会:主に大学等の高等教育機関の休み期間に2日から3日程度、集中的にテーマを決めて行う研修会。

JFKL中等教師向け日本語教師研修会

 マレーシア教育省と共催で実施する中等学校の教師向け研修会。実施形態は年度によって異なる。

日本語教育セミナー

 マレーシアの全教師を対象に年1回実施しているセミナー。日本語教育に関する新しい情報や最近の研究成果などを提供することを主な目的としている。

マレーシア日本語教育国際研究発表会

 JFKLがマラヤ大学予備教育部日本留学特別コースおよびマレーシア日本語教師会(MAJLIS)と共催で年1回実施しており、マレーシアにおける日本語・日本語教育(学)に関する研究発表の場を提供することを目的としている。マレーシア国内のみならず日本や他の東南アジア諸国などからも発表者・参加者がある。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2016年10月にマレーシア日本語教師会(Malaysia Japanese Language Instructors Society, 略称MAJLIS)が、一部高等教育機関のマレーシア人教員を中心に、JALTAMに替わる新たな教師会として、マレーシア政府から認可を受けて正式に発足した。総会で承認された主な活動は1)ネットワークの構築、2)学術研究活動の促進、3)学術誌の刊行の3点である。

最新動向

 上記のとおり、マレーシア日本語教師会(JALTAM)は、2017年10月から毎年、マラヤ大学予備教育部日本留学特別コース(AAJ およびJFKLと「マレーシア日本語教育国際研究発表会」を共催している。また、2020年4-5月と8月には、コロナ禍においてニーズが高まっている、オンライン授業の実践を共有する日本語教育ウェビナーを開催。

日本語教師等派遣情報

国際交流基金からの派遣(2020年10月現在)

日本語上級専門家

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センター 1名
 マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース(AAJ) 2名

日本語専門家

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センター 1名
 マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース(AAJ) 5名

日本語指導助手

 マラヤ大学予備教育センター日本留学特別コース(AAJ)1名
 マレーカレッジクアラカンサー 1名

日本語パートナーズ

 なし。

国際協力機構(JICA)からの派遣(2020年10月現在)

 なし。

その他からの派遣

 民間日本語教育機関(日本語教師養成機関)による提携機関へ派遣

シラバス・ガイドライン

初等教育

 日本語教育を行っている公的な初等教育機関の存在は確認されていない。

中等教育

  従来、全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)では、教育省が承認した1987年完成のシラバスをもとに、4年間(1~4年生)の日本語教育が行われてきた。2004年より、一般中等学校にも日本語教育(を含む国際語科目)を拡大する方針に伴い、5年間(1~5年生)の学習を前提としたシラバス作成作業が開始され、2008年1月に“Sukatan Pelajaran Bahasa Jepun”(日本語指導要綱)として施行。2009年からはシラバスを問わず5年間の学習が行われることとなったため、旧シラバスで4年間学習した生徒を対象とした5年生用のトップアップシラバスが開発され、使用された。2012年以降は全学年でこの“Sukatan Pelajaran Bahasa Jepun”が適用された。さらに、2017年に全科目のカリキュラムが刷新され、日本語も新カリキュラムとなる“Dokumen Standard Kurikulum dan Pentaksiran Bahasa Jepun”(日本語カリキュラムと評価のスタンダード)が施行された。2017年新入生より順次新カリキュラムが適用されており、2021年までに全学年で新カリキュラムが導入される。

高等教育

 各校が独自に設定している。

学校教育以外

 各校が独自に設定している。

評価・試験

 全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)では、1987年から「教育省試験」が行われていたが、2002年からは、4年生終了時に「日本語統一試験」が行われるようになり、全日制中等学校でも2009年から同試験が行われていた。同試験は2012年の実施をもって終了し、前カリキュラムに基づき5年生で受験する新試験(中等教育国際言語到達度試験の日本語科目)が2014年から開始された。

日本語教育略史

   
1966年 マラヤ大学(人文社会科学部)にて日本語講座開設
1968年 マレーシア日本語協会(クアラルンプール)にて日本語クラス開講
1975年 馬日協会(ペナン)にて日本語クラス開講
1976~1978年 在マレーシア日本大使館広報文化センターにて日本語講座開設(1978年中断、1982年より再開、1991年より国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(JCC)に移管)
1981年 マハティール政権「東方政策」提唱(1982年に正式提唱、開始)
1982年 マラ工科大学 政府派遣技術研修生の赴日前集中講座の開講
マラヤ大学予備教育課程(RPKJ;日本留学特別コース、のち通称AAJ)開設
ペナン日本語協会にて日本語クラス開講
1984年 全寮制中等学校(レジデンシャルスクール)6校で日本語が国際語選択科目となる。
日本語能力試験(クアラルンプール会場)開始
1985年 日本語能力試験(ペナン会場)開始
1986年 日本語能力試験(イポー会場)開始
1990年 マレーシア公務員研修所にて日本語研修開始
人事院による日本語教師養成プログラム開始(日本留学によるコンバート事業)開始
1992年 マレーシア工科大学予備教育課程(高等専門学校予備教育プログラム)開始
1993年 マラ教育財団ジャパン・マトリキュレーション・センター予備教育(JMC)開始(1998年終了)
1995年 国際交流基金クアラルンプール日本語センター(JLC)開設
1996年 アジア・ユース・フェローシップ予備教育(AYF)開始(2006年度からは国際交流基金関西国際センターで実施)
1998年 マラヤ大学言語学部に日本語専攻課程設置
1999年 人事院による日本語教師養成プログラム(日本留学によるコンバート事業)休止
日本マレーシア高等教育大学連合プログラム(JAD)開始(JMC改編)
2001年 日本語能力試験(コタキナバル会場)開始
2002年 レジデンシャルスクールで日本語統一試験開始
2003年 人事院による日本語教師養成プログラム(日本留学によるコンバート事業)再開
2004年 中等教育用シラバス改訂作業開始
2005年 一般中等学校(デイスクール)での日本語教育開始
マレーシア教育省によるマレーシア国内での中等教育日本語教員養成事業の開始
2007年 マレーシア国内で養成された中等教育日本語教員のインターン配属開始(以降、インターン配属の翌年に正式配属)
2008年 Sukatan Pelajaran Bahasa Jepun”(中等教育機関日本語指導要綱)施行
人事院による日本語教師養成プログラム(日本留学によるコンバート事業)派遣終了(公式にはマレーシア教育省への移管という位置づけ)
2009年 デイスクール日本語統一試験開始
マラ工科大学国際教育センター(現・INTEC教育カレッジ)東方政策プログラム高等専門学校予備教育コース開始(マレーシア工科大学から移管)
2010年 トゥナガ・ナショナル大学日本留学準備教育プログラム開始(2011年終了)
2011年 日本語能力試験 年複数回実施(クアラルンプール・ペナンで7月実施)
日本語能力試験(ジョホールバル会場)開始
マレーシア日本高等教育プログラム(MJHEP)開始(JAD改編)
2012年 マラ公社による日本語教師養成のための日本留学プログラム開始
旧日本語統一試験終了
2013年 人事院による日本語教師養成プログラムの最終期生が日本留学から帰国、中等教育機関に配属
2014年 中等学校国際言語到達度試験開始
2015年 日本語パートナーズプログラム開始
マレーシア日本語教師会(MAJLIS)発足
2017年 Dokumen Standard Kurikulum dan Pentaksiran Bahasa Jepun”(日本語カリキュラムと評価のスタンダード)施行
2019年 マレーシア教育省によるマレーシア国内での中等教育日本語教員養成事業の再開
2020年 マラ教育財団の資金によるツイニング形式留学プログラムが、マレーシア日本高等教育プログラム(MJHEP)からUniversiti Kuala Lumpur Malaysia, Japan Universities ProgrammeUniKL JUP)に受け継がれ、開始。

参考文献一覧

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