世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)広域支援に向けて

ケルン日本文化会館
吉岡千里

ケルン日本文化会館は昨年2019年に50周年を迎えました。半世紀にわたり、ドイツ語圏における国際交流基金の拠点として、当地のみなさんとともに歩んできました。そんな節目の50年目にあたり、ちょっとした変化を感じることがあります。

当館はもともとドイツ語圏、つまりドイツオーストリアスイス、リヒテンシュタインが担当なのですが、近年、ありがたいことに、それらの国々に加え、お隣のオランダや北欧の国(特に、フィンランドスウェーデンデンマークノルウェー)からも、声をかけてもらうことが増えてきました。

ドイツ、ドイツ近隣諸国の写真
ドイツ、ドイツ近隣諸国

出典:「d-maps.com フランス無料地図」

 

「近いのに、今まではつながりがなかったの?」という声も聞こえてきそうですが…。もちろんさすがにお声がかからなかったわけではありません。各国の日本語教師のみなさんから相談のメールを頂いたり、各国から当館主催の研修にわざわざ足を運んでくださる熱心な先生方もいらっしゃったりと、細くゆるやかなつながりがありました。

その中でも特にフィンランドに関しては、2012年以降、現地を訪問して、実際に現地の先生方とお会いしたり、日本・日本語イベントに参加したりすることもありました。また、「フィンランド・日本語日本文化教師会」主催の研修会やオンライン勉強会で講師を務めさせていただくということもありました。

さらに、2017年に設立された「オランダ日本語教師会」へは、2019年の主催研修に出講させていただく機会がありました。同教師会は外部講師を招聘して日本語教師が切磋琢磨する場を作ったり、国内の日本語教師ネットワーク構築を積極的に進めたりと、活発に活動しています。

このように各国・地域の日本語教育を盛り上げてくださっている先生方、教師会のお手伝いをしていくのが、会館日本語事業の使命の一つでもあります。今後、ドイツ語圏に限らず、オランダや北欧の先生方と直接お会いできる出張の機会なども大事にしつつ、互恵関係を築いて行ければと思っています。ただ、いくら隣の国または陸続きと言っても、思いのほか広いのが欧州です。対象地域が広域に及ぶこともあり、今後はより効率的かつ効果的に業務を遂行することが重要になってくるであろうと考えています。また、それと同時に、何ができるかを検討するだけでなく、各地・各国のニーズをくみ取りながら、機動的に対応していかなければとも思っています。
このような広域を対象とする際に強い味方となるのが、みなさんもご存じのICT(情報通信技術)です。昨今のコロナ禍で、多様なICTツールが使われるようになってきていますが、当館では、2018年からオンライン勉強会への出講、会場とオンラインが同時進行するハイブリッド型の研修会の開催、日本語学習プラットフォーム「みなと」を運用したオンライン日本語講座実施(2019)など、さまざまな形で日本語事業へのICT利用を進め、知見を蓄積してきました。

ハイブリッド型研修の写真
ハイブリッド型研修

今後もこのようなツールを効果的に利用しながら、人と人、機関と機関、地域と地域、国と国をつなぎ、当地の日本語教育を盛り上げていければと思います。そして、今後50年も慕われ、求められ、頼られ、みなさんとともに成長して行けるケルン日本文化会館としてあり続けたいと思っています。

そんな素敵な職場「ケルン日本文化会館」の2020年度キーワードは「開館50周年」と「オンライン日本語講座」です。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Cultural Institute in Cologne (The Japan Foundation)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケルン日本文化会館は1969年開館、日本語講座は翌年1970年に開講した。主にドイツ語圏における国際交流基金の拠点として、文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究・知的交流を3つの柱として様々な事業を実施している。
日本語教育支援として、各種講座(JF日本語講座、入門体験、文化体験、会話クラブ等)、教師支援(教師会支援、研修会の開催)、日本語学習奨励(ポップカルチャーイベント等へのブース出展)、アドバイザー業務(ネットワーク会議や日本語教育相談、情報収集)を行っている。
所在地
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1985年
What We Do事業内容を知る