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ますます発展中!
「JFにほんごeラーニング みなと」
日本語教育ニュース
このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。
2019年2月
国際交流基金関西国際センター
「JFにほんごeラーニング みなと」(https://minato-jf.jp/ 以下、「みなと」)は、地理的、時間的制約によって、日本語の教室に通うことができない学習者や、これから学習を始めたいという世界中の人々に日本語を学ぶ機会を提供するために開発された日本語学習プラットフォームです。2016年7月の公開 より2年半、発展を続ける「みなと」の「いま」をキーワードでご紹介します。
登録ユーザー数5万人
2018年11月に登録ユーザー数が5万人を超え、世界各地(180か国)で利用されています。日本語コースの受講者数は、これまでにのべ8万人を超えています。
「みなと」累計登録者数の推移
7言語対応
「みなと」の表示言語は、2018年1月より英語と日本語にスペイン語・中国語・インドネシア語・タイ語・ベトナム語を加えた7言語に対応しています。多言語化により、さらに多くの方に利用してもらえるようになりました。
7言語に対応
学びが選べる
「みなと」では、現在50以上の日本語コースが開講されています。ユーザーは興味、レベル、学習スタイル、解説言語から自分に合ったコースを選んで受講することができます。
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●興味
ことばと文化が総合的に学べる「まるごとコース 」を中心に、ひらがな・カタカナの文字が学べるコース、アニメ・マンガの日本語や関西弁、俳句が学べるコース、華道のように伝統文化が学べるコースがあります。自分の興味に合わせて学習できます。 -
●レベル
JF日本語教育スタンダードに基づくレベルの中から、A1~B2レベルまでのコースが開講されています。自分のレベルに合ったコースを探して、学習できます。 -
●学習スタイル
インタラクティブなeラーニング教材でマイペースに自学自習する「自習コース」、教師による課題添削やライブレッスンなどのサポートが加わる「教師サポート付きコース」があります。自分の学習ペースや学習スタイルに合わせてコースが選べます。 -
●解説言語
eラーニング教材や教師の解説はコースごとにさまざまな言語で提供されています。現在、「自習コース」には英語、スペイン語、中国語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語、フランス語のコースがあり、「教師サポート付きコース」には英語、スペイン語、中国語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、イタリア語、ハンガリー語、アラビア語で学べるコースがあります。自分に合った解説言語のコースが選べます。
関西国際センター開講のコース
関西国際センターでは、2017年度に「まるごとコース」のA2-1、A2-2レベルをはじめ、「KCよむよむA1コース」「アニメ・マンガの日本語A2(学校場面)コース」「俳句入門B1コース」「ビブリオバトルB1-B2コース」を開講しました。また、2018年度には「まるごとコース」のA2-3、A2-4レベル、「スピーチA2(観光)コース」「関西弁入門A2コース」「華道A1コース」を開講しました。以下に、2018年度に開講した「スピーチA2(観光)コース」「関西弁入門A2コース」「華道A1コース」について、ご紹介します。
- ■ スピーチA2(観光)コース
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日本語のスピーチ構成、語彙、表現を学んで、自分の国の観光地について日本語でスピーチをする教師サポート付きコースです。教師のサポートを受けながら、ステップ・バイ・ステップで学び、ライブレッスンでスピーチ発表会を行います。
- ■ 関西弁入門A2コース
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スキットと解説動画を見て、関西弁の基本的なコミュニケーションを学ぶ自習コースです。動画で学んだ内容はクイズで確認します。関西ならではのコミカルな動画から、ことばだけでなく関西文化も学べます。
- ■ 華道A1コース
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動画とクイズで華道の基本と生け方、関連語彙を学ぶ自習コースです。バーチャルゲーム、または実際の花を使って花を生ける体験もあります。これまで、華道を学んだことがない人を対象にした入門コースです。
海外拠点開講のコース
2017年度より国際交流基金の海外拠点でもコースが開講されるようになり、これまでに15拠点がコースを開講しています。例えば、メキシコやその他多くの拠点では「まるごとコース」の解説言語を現地語化して開講しています。また、マニラでは「ひらがなA1自習コース」と教室での授業を組み合わせて実施しています。バンコクではマンガ『orange』(高野苺/双葉社)を利用したオリジナルの旅行の日本語のコースを制作するなど、現地に合わせたコースが次々に開講されています。
日本語教育現場での活用事例
国際交流基金以外のさまざまな日本語教育の現場でも「みなと」は活用されています。マレーシアとスペインでの活用事例をご紹介します。
- ■ 事例1 学期開始前の課題として活用
- マレーシアの大学では、かなの授業の代わりに学期開始前の「ひらがな・カタカナコース」の受講と修了証の提出を課しています。これまで習得に時間をかけていたかなの授業にオンラインコースを利用することで、効率化を図ることができたそうです。
- ■ 事例2 反転授業への活用
- スペインの大学では、「まるごとコース」を使って、語彙の説明や文法解説などの導入部分を予習しておき、授業では会話練習や発表などの活動を多く取り入れる反転授業を行っています。今まではあまり時間が取れなかった日本文化の学習にも時間をかけられるようになったそうです。
ユーザーからの声
実際に「みなと」で学習したユーザーからは、以下のような意見があります。
eIJ Global賞受賞
2018年11月にはeラーニングを活用した優れたコンテンツやサービス、ソリューションを表彰する「日本e-Learning大賞」の特別部門賞「eIJ Global賞を受賞しました。今回の受賞は、日本語を学習する機会がなかった多くの人々に、その機会を提供することができるようになった点が評価されたのだと考えます。
eIJ Global賞受賞の様子
これからの「みなと」
関西国際センターからはこれからも世界中の人々に向けた魅力的な日本語コースをどんどん展開していく予定です。今後は「漢字コース」や「書道コース」、「茶道コース」などが開講される予定です。国際交流基金の海外拠点からも、さまざまなコースが開講される予定で、マドリード日本文化センターからは「サバイバル・ジャパニーズ(旅行編)コース」が近日開講される予定です。
これからの「みなと」の展開にどうぞご期待ください。最新情報は関西国際センターのウェブサイト 、公式SNS(Facebook 、Twitter )からご覧いただけます。
(東 健太郎/関西国際センター日本語教育専門員)