日本語教育ニュース 日本語国際センター開発「教授法オンデマンド教材」を公開!

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このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。

2023年11月
国際交流基金日本語国際センター

日本語国際センター(以下、NC)では、1989年の設立以来、海外の日本語教師を日本に招へいする教師研修(以下、訪日研修)を実施しています。しかし、2020年からのコロナ禍で訪日研修が約2年間休止を余儀なくされたため、その間に日本語教師向けオンラインコース用の「教授法オンデマンド教材」を開発し、それを使用したオンライン教師研修を実施しました注1

そして、この教材は独習用としても使用できることから、2023年10月から国際交流基金日本語国際センターWebサイトで公開すると同時に、JFにほんごeラーニング「みなと」(以下、「みなと」)の「日本語教師向けコース」で自習コースを開講することにしました。今回はこの教材の内容と活用方法についてご紹介します。

1.「教授法オンデマンド教材」について

この教材は、日本語教授法の基礎知識をテーマ別に学ぶための教材です。日本語国際センターの教師研修の蓄積に基づいて作成されたもので、国際交流基金日本語教授法シリーズ(2006-2011年、ひつじ書房)の内容や、JF日本語教育スタンダード(以下、JFS)の考え方、最近の言語教育の知見を参考にしています。すでに日本語を教えている人に自分の教え方をふりかえってもらうことを意識して作られていますが、これから日本語教師をめざす人が使うこともできます。各教材には動画・テキスト・確認クイズがあり、B1レベル程度の日本語で作られています。

今回「日本語教授法動画・テキスト」ページで公開された教材は次の8種類です。

  • 読解の教え方

    読解の教え方
    読解の基礎知識と読解力をのばすための教え方を学びます。

  • 作文の教え方

    作文の教え方
    論理的な文章が書けるようになるための作文指導の方法を学びます。

  • 日本語教育と文化

    日本語教育と文化
    授業に文化を取り入れるために必要な基礎知識とその方法について学びます。

  • 学習を評価する

    学習を評価する
    学習を評価するために必要な基礎知識を学びます。

アイコンは国際交流基金日本語教授法シリーズ(ひつじ書房)のピクトグラムを使用しています。

各教材は、「JF日本語教育スタンダード」を除き、Unit1準備編とUnit2実践編に分かれていて、その中がさらに2~3のPartに分かれています。準備編ではそのテーマに関する基礎知識を、実践編では具体的な教え方を取り上げていて、全体で一つのコースになっています。

「日本語教授法動画・テキスト」ページは、いつでも、どの教材のどの部分からでも閲覧可能なので、興味や必要に応じて利用してください。

2.教材の内容と構成 ―「文字の教え方」を例に

文字の教え方」は、国際交流基金日本語教授法シリーズ(3)『文字・語彙を教える』(ひつじ書房、2011年)の内容をもとに、JFSの考え方を取り入れて再構成したものです。JFSでは「日本語で何がどれだけできるか」という課題遂行能力を重視しています。文字の学習でも、文字をたくさん覚えることではなく、実際の生活の中で必要な文字が使えるようになることを目標としています。この教材作成方針は他のテーマも同様で、「教授法オンデマンド教材」には教授法シリーズ刊行後のNCの教師研修の蓄積が反映されています。

国際交流基金日本語教授法シリーズとJF日本語教育スタンダードの木)のイメージ
国際交流基金日本語教授法シリーズとJF日本語教育スタンダードの木

各教材のページでは、コース(教材)の概要、目標、構成、学習時間、学び方などを説明しています。そして、そのページ上での動画の視聴と、テキスト及び確認クイズのPDFがダウンロードできます。

国際交流基金 日本語教授法動画「文字の教え方」)のイメージ

「文字の教え方」では前述の通り、JF日本語教育スタンダードの考え方に基づき、文字学習の目的は生活の中で文字を使った活動ができるようになることだと考えています。Unit1準備編Part1、2では日本語の文字の種類と使い方に関する基礎知識を整理します。日本語は文字の種類と数が多く学習の負担が非常に重いので、教師が全体像を正しく理解し、学習目的や学習段階に合わせて適切に指導することが大切です。それを踏まえて、Unit2実践編Part1、2では、かなの「読み」と「書き」の具体的な教え方と注意点を取り上げています。例えばメニューやチラシなどのレアリア(生教材)の利用など、教材・教具を使う目的と効果的な使い方だけではなく、学習の動機づけや学習意欲についても触れています。

各教材の動画は1本10分程度で、動画を見てからテキストで勉強する方法を勧めています。テキストにはビデオの内容に加えてタスク(課題)がついていて、さらに深く学ぶことができます。例えば、ビデオでひらがなとカタカナのどちらを先に教えるかを取り上げていますが、テキストにはそれを具体的に考えるタスクが入っています。そして、教材を学習した後に、確認クイズで理解を確かめることもできます。動画とテキストを使った場合、各パート1時間程度の学習で、「文字の教え方」の場合、全体を約4時間で学ぶことができます。

3.「みなと」自習コース

今年10月から「みなと」の「日本語教師向けコース」でも、この教材を使用した自習コースを順次開講します。「みなと」自習コースの開講予定は以下の通りです。

2023年10月 JF日本語教育スタンダード、日本語教育と文化、読解の教え方
2024年1月 会話の教え方、作文の教え方、文字の教え方
2024年4月 文法の教え方、学習を評価する

受講には「みなと」のユーザー登録が必要ですが、受講料は無料です。コース開講後はいつでも受講開始可能で、受講期間は3か月です。

「みなと」では各コース内のSTEPの順に学習して、自分の学習状況を管理したり、コースの修了証を発行してもらうことができます。教師研修に参加する機会がない人も自分のペースで学習できるので、ぜひ利用してください。

教師向けコース(8)のイメージ

【教師向け】日本語教師のための教授法オンラインコース「JF日本語教育スタンダード」 B1自習コースのイメージ

4.おわりに

NCがコロナ禍で実施したオンライン教師研修では、参加者に「オンデマンド教材」で事前学習をしてもらい、ライブ授業では事前学習での質問やコメントを取り上げて講師が解説したり、参加者同士で情報・意見交換をして、そのテーマに対する理解を深めてもらうことができました注2。今後、独習での利用だけではなく、この教材を利用した研修会やセミナーが世界各地で開催され、お互いの経験や情報、意見を交換する教師同士の学びの場が持たれることを期待しています。

注:

  1. 1.日本語教育ニュース」 日本語国際センター「海外日本語教師オンライン研修」が始まりました!(2021年10月掲載)
  2. 2.令和3(2021)年度 海外日本語教師オンライン研修」研修参加者の声
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